「3K」鉄工所を変えた引率教諭の一言 「ちゃんと勉強しないと…」
利益の2割は決算ボーナスとして社員に還元する。昨年度、新入社員の決算ボーナスは給与の3カ月分だった。
社員に子どもが生まれたら15万円を渡している。2人目は30万円、3人目以降は100万円。
実質定年はない。最近退職した社員は79歳。これまでの最高齢は84歳だ。
障害者雇用で社員も採用するが、給与水準はほかの社員と同じ。区別しない。
5年前、沿岸部にあった会社を高台に移転させた。南海トラフ地震の津波から社員の命を守るためだ。災害時に避難所になるよう和室スペースを設け、非常食や水、毛布をそろえる。
新しい会社には広いロッカールームとトレーニングルームを備えた。
社員食堂は「大阪で一番おいしい」と自負する。お米や野菜を厳選し、作りたてを出せるように調理時間を調整する。毎月、食堂の運営会社と給食委員会を開き、メニューを話し合う。
工場部分は空調に気を配る。快適な環境で社員に仕事をしてもらうためだ。
ちなみに社長室はない。
大阪府南部、岸和田市の「廣野鐵工所」。1945年創業の農機具部品メーカーで、社員は約150人。クボタのトラクターの部品などを製造している。
企業理念は社員の幸せづくり
3年前、民間団体が選ぶ「日本で一番大切にしたい会社」の審査委員会特別賞を受賞。その翌年には中小企業庁の「はばたく中小企業300社」に選ばれた。
企業理念の最初に掲げるのは「社員の成長と幸せづくり」。決して大げさには聞こえない。
社長の廣野幸誠(ゆきせい)さん(65)に尋ねた。
「なぜ、社員のためにそこまでできるのでしょう」
2006年に社長に就いた廣野さん。「実はですね……」。決して忘れることのない約40年前の出来事を語った。
当時の廣野鐵工所は大阪府泉大津市にあった。ある日、近くの小学生が工場見学に訪れた。
入社間もない廣野さんが出迎えた。
地元の子どもたちに会社のことを知ってもらうチャンス。作業工程をわかりやすく説明し、お土産にノートやペンを手渡した。
工場見学の最後に、引率して…