死刑執行、願いかなわず 刺された男性「監視カメラ増えただけでは」
佐藤修史
「なんで今日なんだ」
加藤智大死刑囚(39)に脇腹を刺された元タクシー運転手、湯浅洋さん(68)=宮崎市在住=は26日朝、自宅の居間でいらだちを隠せなかった。
27日に娘が孫を連れて帰省するのに備え、部屋を片付け、拭き掃除をしていた。
「今の私にとって一番の楽しみ。夜、眠れないほどうきうきしていたのに、死刑が執行されたと聞き、一気に気持ちが重くなった」
14年前の東京・秋葉原の惨事が脳裏によみがえった。
「なぜ無差別の犯行を」という疑問への答えを本人から聞きたいと、ずっと願っていた。「結局、心の闇は見えないままか……」
「恨む感情は起きなかった。それよりも…」
2008年6月8日、秋葉原でタクシーを運転中、歩行者天国にトラックが突っ込む現場に遭遇した。
タクシーを飛び降り、倒れていた男性を介抱しているとき、背後からナイフで右脇腹を刺され、気を失った。
ナイフは肺を貫き、出血がひ…