「ママ」と言いながら、親指と人さし指であごをはさみ、下に引いて閉じる。
「ママが好き」
小田修司くん(11)は手話を使って思いを伝える。
この日は母・弓子さん(45)のひざの上に座りながらスマホゲーム。ちょっと甘えていた。2歳上の兄・紘和くん(13)にもちょっかいを出していた。
「ママ、パー、にー」。
短い言葉と独自の手ぶりで気持ちを表現する。特別支援学校小学部の5年生の修司くん、身長は同じ年齢の平均身長より20センチほど低い。
日本に何人いるかはっきりわかっていない、ごくまれな病気だ。
2012年の夏の朝。父親の欽哉さん(51)がいつも通り東京都内の自宅から会社に向かった後だった。
午前7時半ごろ、布団の上で寝ていた生後10カ月(当時)の修司くんが「ガー、ガー」という声を出していた。
元保育士の母「これはおかしい」
気づいた弓子さんが振り向くと、修司くんが両腕を広げ、視線は一点を見つめていた。その体は力が入りこわばっているようで、普段とはまったく違う表情だった。
「これは何だろう」
元保育士だった弓子さんは、熱性けいれんになった子を何度か見たことがあった。だが、その症状とは違う。修司くんにも熱はなかった。
「これはおかしい」
すぐに救急車を呼び、病院に…
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