低迷期から抱いていたファンへの思い、吉田正尚はスタンドを指さした
(27日、プロ野球日本シリーズ第5戦 オリックス・バファローズ6―4東京ヤクルトスワローズ)
打球の行方を確かめるまでもない。オリックス吉田正尚はベンチへ、そしてスタンドに向かって指を差した。
3―4で迎えた九回裏。1死二塁から西野真弘の投手強襲安打と敵失で追いつく。2死後、4番打者は浮いた変化球を見逃さなかった。
フルスイング。このシリーズでは勝負を避けられたり、厳しいコースを攻められたりで、打率は第4戦までで1割6分7厘だった。「吹っ切れた。甘いところをしっかり仕留めていく」。頭の中は、それだけだった。
打球は大歓声に乗り、またたく間に右翼5階席へ。昨年の日本シリーズでもサヨナラ打を放ったマクガフから、再び会心の当たりで決着をつけた。「感無量です」。仲間から祝福のシャワーを浴びた。
チームの低迷期は、まさに「孤高の強打者」だった。2016年のプロ1年目から、チームはBクラスばかり。21年に優勝するまでは、打率3割台をマークし、2桁本塁打を打っても、勝てなかった。
このころ、「球場が一体となって盛り上がるように」と、自らも製作に関わったのが、ダンベル型のグッズ。今では、このグッズを使った応援が本拠地の名物の一つになった。
「みんながやってくれるのが打席から見える。すごくうれしい」。この日、本拠には3万3千人超のファンが集まった。シリーズ5戦目にして、五回にチーム初本塁打。さらに、最後は特大のアーチを届けた。
2敗1分けから、連勝でタイに持ち込んだ。「あとは勝ち抜くだけ」と中嶋監督。昨季は逃した日本一を奪いに、敵地へ乗り込む。(室田賢)
中嶋監督(オ) 「すごい試合になった。しびれたね。なかなか勝てなかったが、(勝敗が)タイになった。あとは勝ち抜くだけだと思う」
紅林(オ) 四回に反撃の中前適時打。「追い込まれていたので、食らいついていくことだけを考えていました」
若月(オ) 四回に同点の左翼線二塁打。「みんなでつないできたチャンスの場面でしたし、執念で打ちました」
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