東武練馬駅周辺は、下町風情の漂う商店街が広がる。
夕暮れ時。買い物客らの間をぬって、仕立ての良いスーツを着た男性が歩いてきた。
入っていったのは、男女合わせて3人の日本王者らが所属する三迫ボクシングジム(東京都練馬区)だ。
「強い選手が集まっていて、目の前に目標がいる。ここで練習する毎日がテストだと思っています」
リングネーム藤田炎村(ほむら)、27歳。本名は裕崇(やすたか)という。
ぎらぎらとした目をしている。相手をなぎ倒すパンチ力と、劣勢でも勝負を捨てない闘争心が売りだ。
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8月の試合は、格上の相手に1ラウンドで2度倒され、ふらふらになりながら、大逆転でTKO勝ちした。
戦績は9勝(7KO)1敗。スーパーライト級(約63・5キロ以下)日本4位で、王座挑戦が近づいている。
藤田にはもう一つの顔がある。
リクルートに勤務し、不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」の営業マンをしている。
午前9時から夕方まで仕事をして、ジムへ。練習は約3時間。帰宅後、さらに仕事に向き合う日もある。
「日中は誰かを巻き込まなきゃできない仕事を、練習後は1人でもできる資料作成などに充てます」
入社5年目の働き盛り。社内表彰も受けている。
競技と仕事。
共通するのは強烈な結果への…