内部資料が示す輸血拒否の教え 親となった信者が抱いた強烈な違和感
教会の説教の時間。男性の前に1枚の書類が示された。記載された内容を読みつつ、教会の世話役「長老」は言った。
「子どもへの輸血は拒否しないとね」
信者の男性は奥歯をかみしめつつ、作り笑いでうなずいた。脳裏には、自身の子どもの顔が浮かんでいた。
「エホバの証人」をめぐり、弁護団が結成されました。信者や元信者からの相談をまとめ、教団の実態解明を目指します。ある現役信者は取材に「輸血」をめぐる内部でのやりとりを明かしました。
物心ついた時から、母親がキリスト教系新宗教「エホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)」の教会に通っていた。母は結婚を機に夫の故郷に移住したが、義母との折り合いが悪く、家庭内で孤立。そんななか、布教活動で自宅を訪問してきた信者に誘われ、教会に通い始めていた。
「周りの人は悪魔に毒されている」
母の教会通いに父は反対し、家庭内ではけんかが絶えなかった。それでも母は幼い自分を連れて、教会に通い続けた。
母からは教義通りの生活をするよう指示された。着るべき服装、読むべき本を限られ、教義の勉強もさせられた。そうした決まりに背くと、ムチでたたかれることもあった。
学校で開かれるクリスマス会や誕生日会に出られず、争いごとだとして柔剣道の授業や運動会の応援合戦などへの参加も許されなかった。「なんでサボるの」と同級生からとがめられ、涙ながらに弁解することもあった。
周囲との違いは感じていたが、「信仰を守るために必要。周りの人は悪魔に毒されている」と信じ込まされた。
脱会考えるも、決断できない理由
教えを信じたまま、社会人になり、教会で出会った信者の女性と結婚した。子どもも生まれた。子どもの寝顔を見るたび、エホバを信仰しながら、穏やかに日々の生活を送っていこうと思っていた。
しかし、ある日、教会の説教の時間に長老が1枚の書類を示してきた。
タイトルは「親として子ども…