母のために残した380文字 18歳で急逝した息子からのメッセージ

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若松真平
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 高校の卒業式まで残り半月を切った2022年2月17日。

 群馬県内に住む石田龍之介さん(当時18)は「急性出血性白質脳炎」で救急搬送された。

 当初は何の病気かわからず、脳の炎症を抑える薬を投与したものの、5日後に脳死状態と診断された。

 病院で説明を受けた母の裕子さん(49)は「突然、龍之介だけが死への道を猛スピードで走り出してしまった」と思った。

 4月から、東京電機大の理工学部で学ぶことが決まっていた。

 次男も高校進学を控えていたし、夫は人生最後と決めた転職の予定だった。

 「それぞれに門出を迎える家族3人を応援する」

 裕子さんが思い描いていた未来は一変した。

 搬送から約1カ月後の3月19日、龍之介さんは病院で息を引き取った。

500字詰め原稿用紙に

 「私がもっと早く気づいていたら、龍之介は助かったかもしれない」

 裕子さんは自らを責めて「たら」「れば」ばかり考えていた。

 次第に、自分が起きているのか寝ているのかもわからなくなった。何もできず、時間だけが過ぎた。

 「前を向かなくちゃ」と現実に戻ると、今度は嫉妬心にさいなまれる。

 「なぜ、私の子どもが死ななければならなかったのか」

 他人をねたむ気持ちを抑えられないことが苦しかった。

 そんな裕子さんを救い、再び生きるための道しるべになったものがある。

 ふいに見つけた、龍之介さんからの「メッセージ」だ。

 きっと息子は、こんな人生の閉じ方を予期していなかったはずだ。

 なのに、自らを責める母のために言葉を残してくれていた。

 500字詰め原稿用紙に見慣…

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若松真平
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