岸田文雄首相は何をしたいのかわからない――。政権発足から1年7カ月。今もなお、そんな見方があります。実際には何をめざしているのか。政策はどう決まっているのか。「岸田官邸の実像」に迫ります。
衆参五つの補欠選挙の開票が続いていた。4月23日夜、岸田文雄首相は部屋着姿で住まいである首相公邸にいた。同居する長男で首相秘書官を務める翔太郎氏と一緒にNHKの開票速報を見ていた。
時折、首相の携帯電話が鳴る。自民党幹部からだった。速報で参院大分選挙区補選での劣勢が伝えられると顔をしかめた。
4勝1敗――。自民は補選前の3議席から一つ増やした。結果が判明すると首相は一安心した表情を見せた。
首相はいつ、衆院解散・総選挙に打って出るのか。補選の結果を踏まえ、永田町の関心は、首相の出方に集まった。
「今、解散・総選挙は考えていない」。翌24日朝、首相官邸で記者団の質問に淡々と答えた。
ただ、その夜、周囲にこう漏らした。
「補選の結果は解散の判断に影響しない。解散は総裁2期目を考えたときに、一番良いタイミングでやる」
自民党総裁の任期は来年9月…