米ボストンに隣接する学術都市・ケンブリッジ。ハーバード大にほど近い一角に、一風変わったルールを定めているラーメン屋がある。食べ終わった後、自分の夢をスピーチしなければならないのだ。
2017年、佐野月咲(るなさ、25)もそこにいた。
「『アイスホッケーで活躍したい』とか、『オリンピックに出たい』とか」
佐野が進んだのは、ハーバード大。世界中の秀才が集まる大学は、女子アイスホッケーの強豪でもある。全米大学体育協会(NCAA)1部に所属し、全米女子大学選手権で準優勝4度。スカウトされた学生しか入部できない。
18歳以下日本代表として世界選手権に出場経験もある佐野は、東京・筑波大付高2年生のときの代表落選をきっかけに海外でのプレーを志した。最もひかれたのが、学業はもちろん、アイスホッケーでもトップクラスのハーバード大だった。
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渡米し、ヘッドコーチに直接思いを伝えた。入部枠は埋まっていると言われても「合格したら、プレーさせて」と食い下がり、承諾を得る。
必死に勉強した。父との会話はすべて英語。TOEFLの得点は一流大で必要といわれる100点を超えた。やがて、吉報が届いた。
しかし、大学生活は決して順風満帆ではなかった。チームでアジア出身は自分だけ。「白人のスポーツなので、だいぶ偏っていました」
日々うまくなっている実感は…