旧統一教会関係断絶「決議しないで」 7市町議会に要望書

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 埼玉県東部の七つの議会の事務局に5月中~下旬、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係断絶をうたう決議をしないよう求める要望書が出されたことがわかった。いずれも議長と議員あてで、決議されれば憲法違反にあたる恐れが強いとして、訴訟を起こす可能性があると記されていた。提出者は個人で、このうち5議会に届いた文書にはさいたま市内の同じ信者の名前が記されていた。

 朝日新聞の取材では5月19~30日付で久喜、白岡、蓮田、春日部、三郷、八潮の各市と杉戸町の計7議会事務局に、「全国霊感商法対策弁護士連絡会の不当な声明に対する要望書」が相次いで届いた。

 文書では、同連絡会が今年3月、教団の違法な伝道活動や霊感商法による被害が続いているなどとして、全国の政治家に向けて関係を絶つ決議などを求める声明を出したことを批判。「少なくとも現在は、正体を隠した違法な伝道活動や霊感商法を行っておらず」とし、決議は地域の信者や政治家らの「思想・良心の自由」(憲法19条)や「信教の自由」(同20条)などを侵害するため「取消訴訟及び国家賠償請求訴訟を行う可能性がある」と記している。

 白岡、蓮田、三郷、八潮の各市と杉戸町の計5議会への要望書に提出者として名前があった男性は、取材に対して教団の信者であることを認め、詳細については「家庭連合本部に聞いて欲しい」と話した。教団広報局は「この種の要望書の提出に組織的に関与することはない」としている。

 久喜、春日部の両市議会への提出者については、いずれの事務局も「市民」としており、名前を明らかにしていない。

     ◇

 各議会事務局は議員らに要望書のコピーを配った。

 白岡市議会は6月21日に6月定例会が閉会。要望書について議論はしなかった。大島勉議長は、要望書の影響について「現状は(決議の)話が持ち上がっていないので、何とも申し上げられない」と述べる。

 一方、他市の議員は「裁判の可能性を持ち出して議会を脅していると感じた」という。「選挙を手伝ってくれるから信者をむげにはできない」と話す同僚議員もいるといい、要望書が届いたことで「決議は控えた方がいいと考える議員もいるだろう」とみる。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会は3月の声明で、教団は「反社会的行為を組織的に行ってきた団体であり、今もそれを続けている」とし、政治家が行事に出席するなどすれば「反社会的団体に関する否定的な見解を一掃し、公的団体としてのお墨付きを与える効果を持つ」と指摘。決別しなければ「反社会的活動の是正が困難になる」などとして決議を求めている。

 昨年12月以降、信者や教団の友好団体が富山市大阪府などを相手取り、「信教の自由」などを侵害されたとして決議の取り消しと慰謝料などを求めて提訴する例が相次いでいる。

 同連絡会代表世話人の郷路征記弁護士は「関係断絶の決議は、信者が信仰することに何の影響も与えないので、憲法違反になるという議論は成り立たない」と話す。

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