プロの覚悟問い続け モー娘。AKB育てた夏まゆみさんが残したもの

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松村北斗

 6月に61歳で亡くなった夏まゆみさんは、振付師、ダンスプロデューサーとして「モーニング娘。」「AKB48」という2大アイドルグループを育てた。「目からビーム、手からパワー」。分かりやすく的確な言葉を駆使して、プロとしての心構えを伝えた。早すぎる悲報に、「教え子」たちから感謝と追悼の言葉があふれる。

     ◇

 忘れられない光景がある。2013年1月、AKB48グループの人気曲をファン投票で選ぶイベント「リクエストアワー」。会場の東京都内のホールに夏さんが「サプライズ」で登場した。

 それまでの熱狂がうそのように、静まりかえる。少しかすれた落ち着いた声で夏さんは語り始めた。

 「人間にはすごい底力がある。一番つらい時こそ、底力くんに会える、成長するチャンスなんだ。会えた自分は絶対自信を持てる。がんばっているのは分かっているけど、もっと、もっと底力くんに会いにいきなさい」

 スピーチは中国・上海に拠点があるAKB48の関連グループ(当時)で活動することになった宮澤佐江さん(33)の激励、そしてステージのメンバーに向けたものだった。

 だが、一つ一つの言葉が、まるで私にも語りかけるように、染み入ってきた。包まれるような、背中を押されるようなぬくもり。不意に涙があふれてきた。

 ステージに立つ覚悟を常に問う。そして、相手に響く言葉を選び抜いて声をかける。まさに夏さんの真骨頂だった。

 夏さんはダンサー出身で、1…

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