日テレ「20年以上事務所を特別扱い」 ジャニーズ性加害問題を検証

平岡春人
[PR]

 故ジャニー喜多川氏の性加害問題を巡り、日本テレビは日テレとジャニーズ事務所との関係についての社内調査を行い、4日夕方のニュース番組「news every.」で結果を公表した。局内では20年以上にわたって事務所を特別扱いする空気が醸成されたなどと指摘。報道現場が「必要以上に慎重になったケースがあった」ことも明らかにした。

 事務所が設置した再発防止特別チームが調査報告書で「マスメディアの沈黙」が性加害拡大の背景にあったと指摘したことを踏まえ検証を実施。20年以上過去にさかのぼって、報道局の記者や番組担当者、各部署の幹部らをヒアリングしたことを明らかにした。

 番組では、週刊文春が性加害問題を報じた1999年ごろや、東京高裁が文春記事の重要部分を真実と認める判決を下した2003年、さらには04年の最高裁での判決確定時に、この問題を報じなかった点について、「芸能界での特異な世界での出来事という認識だった」「芸能ゴシップだと軽く捉えていた」「男の子に対する性加害について、現在とは意識の差があった」などとする当時の報道局幹部の証言を紹介。スタジオの伊佐治健報道局長が「裁判所の認定という報道するべき機会を逃して結果的に被害を拡大させたことは、痛恨の極み」などと述べた。

 また、この当時の日テレと事務所の関係自体についても言及。当時の編成幹部の「(事務所を)怒らせたら面倒くさい(と思っていた)」といった証言などを紹介し、藤井貴彦アナウンサーが「社内では20年以上前から、怒らせるとキャスティングや取材ができなくなるのではという認識や雰囲気があった」と述べた。

 また、報道番組のキャスターにジャニーズの所属タレントらを起用してきた結果、「報道が必要以上に慎重になったケースがあった」とも言及。18年に同局の番組に出演していた当時の所属タレントが強制わいせつ容疑で書類送検(のちに不起訴)された際、報道現場で、書類送検の情報をつかみながら、報道と編成が対応を協議し、報道幹部が報道に慎重になり、他社よりも報道が遅れたことを公表。当時の報道幹部の「忖度(そんたく)かと言われればそれは忖度だと思う」との証言も紹介した。

 今年3月に英BBCが性加害問題の特集を報道した際の対応も検証した。現場担当者の間で「報道するかどうかを相談すること自体もためらう土壌」があり、報道幹部などに相談せず、現場間のやりとりだけで報道の動きが止まり、報道幹部なども特集を把握しながら、指示しなかったことを明らかにした。伊佐治報道局長は事務所などから報道を止める動きはなかったとしつつ「重い責任を感じる。どこか触ってはいけない思い込みが広がっていた。言うべきことが言えなかった」などと反省を口にした。(平岡春人)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
平岡春人
文化部|映画担当
専門・関心分野
映画、音楽、人権
  • commentatorHeader
    たかまつなな
    (時事YouTuber・笑下村塾代表)
    2023年10月9日18時24分 投稿
    【提案】

    元人気司会者ジミー・サビルの死後、少年・少女への性的虐待が発覚した際、BBCは外部の調査委員会に依頼し、調査と報告書作成を行っています。日本のメディアも引き続き、権力構造と再発防止を考える調査を引き続き継続して欲しいと思います。 そして、

    …続きを読む
ジャニー喜多川氏の性加害問題

ジャニー喜多川氏の性加害問題

ジャニーズ事務所創設者のジャニー喜多川氏による性加害問題。関連ニュースをお伝えします。[もっと見る]