その瞬間、何が起きたのか理解できなかった。
昨年10月、東京・国立代々木競技場で開かれたバレー男子のパリ五輪予選・日本―トルコ戦。第3セットは15―15と緊迫した展開になった。
何本かラリーが続いたところで、後衛の高橋藍(22)=モンツァ=が動いた。
味方からのトスに合わせ、バックアタックを狙うために跳び上がる。ネット際に目をやると、相手の選手2人が両手を上げてブロックに跳んでいた。
「釣れた」
アタックを打つために動かしていた右腕をすぐさま引き、空中で体をひねりながらオーバーハンドでトス。ノーマークになっていた西田有志(23)=パナソニック=が強烈なスパイクを相手のコートに打ち込んだ。
1秒に満たない短時間でのプレーの切り替えに、1万人超の観客が沸いた。勢いに乗った日本はストレート勝ち。チームはこの後の試合でも勝ち星を積み重ね、2008年北京五輪以来となる自力での出場権を獲得した。
アタックすると見せかけてト…