第6回守りたいもの、壊そうとしたロシア 帰還後に元少年が刻んだタトゥー

有料記事守りたいもの ウクライナ侵攻2年

キーウ=藤原学思
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 16歳だった元少年は、18歳の成人になった。そしてこの1月、ウクライナの国章のタトゥーを、左腕に刻んだ。

 ボフダン・イエルモヒンさん。ロシアによるウクライナへの全面侵攻後、激戦地となった南部の港湾都市マリウポリから、強制的にロシア側に連れ去られた。ようやく帰還できたのは、1年半後だった。

 10年前に両親を失った。マリウポリで、ある学校長の養子として育てられ、ウクライナ人としての身分証明書も持っていた。

 2022年2月24日に全面侵攻が始まった際は、溶接工になるための学校に通う学生だった。ロシア軍が「完全制圧」を宣言する頃まで約3カ月間を、マリウポリで過ごした。

 いまはロシアの支配下にあるマリウポリで何人が亡くなったのか。その数は「8千人以上」(国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」)とも、「2万5千人」(ウクライナ当局)とも言われる。

【連載】守りたいもの ウクライナ侵攻2年

ロシアによる全面侵攻は、ウクライナのあらゆるものをむしばんでいます。領土や生命、日常や家族、自由や未来。だからこそ、ウクライナは戦っています。「守りたいもの」に焦点を当て、2年間を現場から伝えます。

 この期間のことは、忘れたくても忘れられない。支援した弁護士によると、イエルモヒンさんは「胸に穴の開いた女の子を腕に抱いた」という。

 キーウにある現在の自宅でそのことを尋ねると、イエルモヒンさんは唇をかみ、下を向き、首を横に振って「話したくない」とつぶやいた。ただ、こう付け加えた。

「洗脳」受け続けた1年半

 「マリウポリで見たものは…

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論
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