第1回母は子を残し病院を去った 「安全な選択肢」めざすフランス匿名出産

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 フランス・パリ郊外の閑静な住宅街にあるベジネ病院の産前産後科に、20歳の女性が男性に付き添われて現れた。男性はこの女性と同居する叔父で、女性より先に、おなかが大きくなっていることに気づいた。

 検査をすると、すでに妊娠33週。中絶できるタイミングを過ぎていた。

 女性は面談した病院の心理士に言った。「妊娠をしていたなんてショック。今はそれ以上のことは考えられない」。それまで自分が妊娠している可能性を考えたことはなかったという。

 この女性に病院はどう対応したのか。面談を重ねるうち、女性はおなかに赤ちゃんがいることについて考えることがつらい、と心理士に漏らした。この間、女性は交際相手に妊娠を伝えたが、「それ以上は聞きたくない」と拒絶された。

 女性が妊娠を受け入れられるのか、出産後のことを考えられるのか。病院のチームは「匿名出産」の選択肢も念頭に動き始めた。

望まぬ妊娠に悩み、女性が誰にも相談できず孤立して出産するケースが絶えない。匿名出産など女性と子の命や権利を守るフランスの取り組みとは。日本で独自に母子を支援する慈恵病院の視察に同行しました。

 フランスの匿名出産は、自分…

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