山あり谷ありの道を走る「山の神」 わくわくマインドで人生第3章へ

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辻隆徳
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 レースを終えると、国立競技場の外の一角に呼ばれた。

 そこには100人近いファンが待っていた。

 拍手で迎えられた神野大地(30)の目から、思わず涙がこぼれた。

 パリ・オリンピック(五輪)の日本代表をかけた昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)。神野は完走者56人のうち最下位に終わった。タイムも自己ベストに16分も及ばなかった。

 ふがいなさは全くなかった。むしろ、やりきったという気持ちだった。

 「いいときも悪いときも応援してくれる方がいたからスタートラインに立てた。後悔なく終われたのは、みなさんのおかげです」。ファンにそう感謝を伝えた。

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 一躍、時の人となったのは9年前のことだ。

 青山学院大3年生のとき、箱根駅伝の山登り5区に初めて起用されると、2位の選手に5分近い差をつける圧巻の走りで当時の区間新記録をマーク。チームの総合優勝に大きく貢献した。

 同時に「山の神」という称号がついた。

 高校時代は、ほぼ無名だった。「4年間で1回、箱根を走れたらいいなくらいの気持ちだった」。それが、たった一度の走りでスター街道を駆け上がった。

 もちろん、大学卒業後も注目された。だが、「ここから本当の意味の陸上界の厳しさを知ることになりました」。

 初マラソンとなった2017年の福岡国際は、大勢のメディアが自身の走りを目当てに集まったが、結果は13位。東京五輪の代表を決める19年のMGCも17位に終わった。レース中に腹痛に苦しみ、途中棄権や失速することも少なくなかった。

 「平地で結果を残せない」…

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