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「旗を立ててこい」 ロシア兵は走った 命じられた片道切符

有料記事最激戦地 ロシア・突撃兵の証言

ウクライナ東部ドネツク州=杉山正
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 ウクライナ東部ドネツク州の小さな町で5月下旬、ウクライナ軍の関係者と待ち合わせた。この場所が指定されたのは前日夜。現れたのは、愛想のいい屈強そうな2人の男性だった。

 「携帯電話は持ってこないように」

 そう言われ、彼らが用意したSUV車に乗るよう促された。

 幹線道路や農道。車は道に迷ったかのようにぐるぐると回った。しばらくして同じ道を通っていることに気がついた。

 「また同じ道だ」

 記者がつぶやくと、男性の一人が「道は覚えないでもらいたい」と言った。車はさらに進む。言われた通り、外の景色は見ないようにした。

 30分以上かけて古びた平屋の建物の前に到着した。前線で捕らえたばかりのロシア兵を一時的に収容する施設だという。安全上の理由から、この場所は秘匿されている。今回、記者はここで、捕虜への取材を許可された。

【連載】最激戦地 ロシア・突撃兵の証言

「最も困難な状況」。ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ドネツク州の前線についてこう表現しています。ロシアが兵士を大量投入し、攻勢を強めているためです。一方、現場のロシア兵は何を思い、戦うのでしょうか。この最激戦地で捕らえられたばかりのロシア兵3人が取材に応じ、攻勢の裏側にある悲惨な実態を記者に証言しました。

 建物の奥まった場所にある、4畳半ほどの部屋に通された。

 アジア系の顔つきのロシア兵が入ってきた。「ヤクート」というニックネームを名乗った。31歳。極東アムール州の出身で、父親が朝鮮系なのだという。1週間ほど前に捕虜になったばかりだった。

 ヤクートは記者に、戦場で自分が命じられた「ある任務」について語った。

 ロシア軍に入隊したのは昨年…

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この記事を書いた人
杉山正
ヨーロッパ総局長
専門・関心分野
国際政治、紛争、外交、民主主義
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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2024年6月30日10時14分 投稿
    【視点】

    戦争について考えるときにはいつでも、この記事にあるような戦場のリアルを忘れてはならないと思う。ロシアが、ウクライナがと、主語を大きくして論じるほどに、戦争が及ぼす壮絶なまでの悲惨さが矮小化されてしまうからだ。 仲間が次々と死んでゆくなかで

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