第3回親の怒声が子にもたらした異変 中学受験塾講師が語る教育虐待の実態

有料記事中学受験と教育虐待

高浜行人
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 5年ほど前、首都圏の大手中学受験塾のある教室に、頭にガーゼを付けた児童が入ってきた。

 「どうした?」

 授業を担当する若手の男性講師が声をかけた。男性講師は以前、この児童の父親から「母親は普段は穏やかだが、自宅でよく激高する」と聞いていた。

 最初ははぐらかされたが、「お母さんが怒った?」と水を向けると、児童は明かした。前夜、勉強への姿勢などを巡って母から強く叱られ、いすを投げつけられた、と。

 この児童の成績はとても良かった。入塾前の低学年のころから厳しい指導を受けていた結果だと聞いていた。

 男性講師によると、嫌がる子どもに無理に勉強を強要した場合でも、学習内容がそれほど難しくない小学校中学年ぐらいまでは成績が伸びることがある。

 「それが児童の母親にとって誤った成功体験となり、無理をさせ続けるなかで過激化したのではないか」

 危機感を覚え、この児童の父親に相談し、母親の関与を減らしてもらった。ただ、成績が下がり、受験をする前に塾をやめてしまった。その後のことはわからないという。

大手塾に勤める男性講師は、これまでの中学受験指導経験の中で、教育虐待が疑われるケースを多く目撃してきたといいます。なぜ親たちは子どもを追い込むのか。男性講師が考える背景事情とは。

未明まで勉強、髪や眉毛を抜く子も

 数年前、授業中に「親にたた…

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この記事を書いた人
高浜行人
東京社会部|教育班キャップ
専門・関心分野
学校教育、受験、教育行政
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    中川文如
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長)
    2024年7月3日15時0分 投稿
    【視点】

    我が子に手をあげたくなってしまった経験、私にも、あります。子を思う親の気持ち、それが強ければ強いほど、何かの拍子に暴走してしまうことがあるのだというのが実感です。 私が担当するスポーツの世界では、監督やコーチによる暴力的指導、行き過ぎた勝

    …続きを読む