「恵」障害者施設100カ所運営不可に 不正請求巡り国が連座制適用

寺沢知海 高絢実
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「極めて悪質」2千人に影響か

 障害者グループホーム(GH)運営大手の「恵(めぐみ)」(本社・東京都港区)が組織ぐるみで障害福祉サービス等報酬を不正請求したなどとして、愛知県名古屋市は26日、県内5カ所のGHの事業者指定を取り消すと発表した。障害者総合支援法による最も重い処分で、厚生労働省は同社が12都県にある約100のGHを運営できないようにする「連座制」の適用を決めた。

 同社をめぐっては2022年5月、愛知県内のGHで知的・精神障害のある入居者から実費の3倍ほどの食材費を徴収し、残りを同社の利益にしていたことが判明。過大徴収の総額は全国で約3億円にのぼり、名古屋市などが「経済的虐待」と認定した。

 この調査の過程で、同社が勤務実績のない職員が働いたように装うなどし、県内の27GHすべてで障害福祉サービス等報酬を計4億1千万円、不正に請求していたことを県などが確認。自治体の調査にはつじつまの合う虚偽の出勤簿を提出していたこともわかり、「極めて悪質」と判断された。県などはこの日、同社に加算金を含む計5億8千万円の返還を命じた。

 指定取り消し処分となったのは、名古屋市の4施設と同県幸田町の1施設。8月31日から12月1日にかけ、順次、効力が発生する。

 障害者総合支援法は、指定取り消しの理由となった不正に法人の組織的な関与が認められれば連座制を適用すると定める。今回は愛知県内のほか川崎市などでも不正請求や食材費の過大徴収が発覚し、厚労省が組織性を認定。同社の他のGHも6年ごとに必要な指定更新が認められず、順次、運営できなくなる。

 同社が運営するGHの定員は約2千人。愛知県などは入居者に対し、運営が停止するまでに他の施設に移ってもらうことを軸に検討を進めるが、退去せざるを得なくなる可能性も残る。多くの入居者やその家族は「同じGHを利用し続けたい」と希望。多くのGHの指定更新日は26年度以降のため、他の法人への事業譲渡を含め、国と協力して対応を急ぐ考えだ。(寺沢知海、高絢実)

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