「女性だから」の先へ 都議補選3分の2が女性 東京の変化を読む

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経営者・弁護士 越直美=寄稿
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Re:Ron連載「社会のかたち 越直美の実践」第5回

 7月7日の東京都知事選では、現職の小池百合子氏が当選しました。当初は小池氏と蓮舫氏の「女性対決」と言われましたが、結果は小池氏の圧勝で、石丸伸二氏が2位と大きく票を伸ばしました。

 男性同士なら「男性対決」と言われないのに、女性同士なら「女性対決」と言われるのも、本当は変な話です。ともあれ、東京都知事選は、小池氏の2期8年が評価された一方で、インターネットを駆使して都民の関心を呼び起こした石丸氏が、既存政治への不満の受け皿になった形です。

 全国的には知事選が注目を集めましたが、実は、同時に行われた都議補選で女性の候補者が50%、当選者をみると9人中6人、つまり3分の2が女性の当選者になりました。2021年の都議選の女性の候補者が28%、当選者が32%だったのに対し、大幅に増えています。

 さる6月の港区長選でも、6選目を目指した男性の現職区長を破って、清家愛氏が当選しました。東京都では23区長のうち女性が7人で30%。全国の市区町村長でみれば、女性はまだ3%しかいないのに対し、圧倒的に多い。

 この連載で昨年、「ほんとうは選挙に強い女性候補、二つの条件」について書きましたが、最近、東京の選挙では、複数の女性候補が立候補することや女性が当選することが急速に増えてきました。

 私は、これは「二つの条件」にてらして当然のことと受け止めています。本稿ではさらに踏み込み、女性候補者が増えることの意味、将来展望について考察を深めたいと思います。

 上記の記事は以下のような内容でした。

 私は2012年に36歳で大津市長に就任し、当時、最年少の女性市長でした。なぜ有権者が私を選んでくれたのかを振り返ってみると、「何かを変えてくれそう」という期待だったのではないかと思っています。今の政治に満足している有権者が少ないなか、既存の政治家とはぱっと見で違う女性や若者が選挙に出ると、有権者の変革への期待や潜在的な不満に訴えかけるのです。

 女性の候補者が強い条件は、①都市部であること、②選挙区が広いこと。都市部で選挙区が広いと、自治会を回るような「どぶ板選挙」ではなく、ポスター、インターネットなどを使っての「空中選」となり、候補者のイメージが大事になるからです――。

 これらの条件が当てはまるのが、東京における選挙です。都市部であることから、どぶ板選挙には限界がある。また、SNSで情報を得る有権者も多い。女性や若者という従来の政治家とは異なる属性が、東京の選挙では強みになります。

 今回の都議補選では、江東区品川区中野区、北区、府中市で複数の女性が立候補し、足立区にいたっては女性候補者のみでした。当選した女性の党派は様々ですが、当選者のうち女性が3分の2と半数を超えています。

「女性だから」のプラスマイナス

 女性の候補者が増えると、どのような効果があるのでしょうか。

 効果のひとつに、「女性だから」注目されることや、「女性」として一くくりにされることがなくなるということがあります。

 当たり前ですが、男性には様々な考えや政策を持つ政治家がいます。女性も同じです。女性だから同じ考えを持つわけでも、政治手法が似ているわけでもなく、それぞれ思想やリーダーシップのあり方は多様です。

 私が36歳で大津市長に当選した時、新聞やテレビに取り上げられました。「最年少の女性市長」というのがポイントでしたが、「性別や年齢は私の属性であって、私の政策ではないのに……」と、居心地が悪かったのを覚えています。

 4年後、2期目の選挙に出る時には、候補者4人のうち2人が女性だったこともあり、女性という点が強調されることはなくなりました。現職が立候補するのだから、当然ながら1期目の政策に対する批判、たとえば職員給与の削減や市の施設の削減に対する反対がありましたが、それは自分自身の政策や実績に対する批判であり、むしろうれしく思いました。

 ただ、そのなかに政策や実績ではなく、「やり方」に対する批判もありました。

 2期目の選挙の前に、新聞な…

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