書店の在庫情報の見える化計画始動 図書館の検索システムとも連携へ

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宮田裕介
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 街の書店が減り、国による支援も模索される中、「書店在庫情報プロジェクト」が動き始めた。スマホ一つで、近くの新刊書店の在庫状況を「見える化」する仕組みだ。公共図書館の検索システムとも連携し、地域の書店へ貸し出し待機者を誘導することも視野に入れる。

 このプロジェクトは、書店や取次、出版社らで作る「出版文化産業振興財団」(JPIC)、中小出版社でつくる業界団体「版元ドットコム」、図書館蔵書検索サイトを運営する「カーリル」で行い、2年をかけて実証実験を重ねる予定だ。

 概要はこうだ。

 現状、テレビや新聞、SNSなどで紹介された本が「欲しい」と思っても、近隣の書店の在庫を横断的にサイトなどで見る方法がない。Googleでも位置情報で近くの書店を把握できるが、新刊書店と古書店がない交ぜで、書店ごとに在庫を確認する必要がある。そのため、リアル書店で購入せずに、アマゾンなどのネット書店に流れてしまう理由の一つになっていることが、業界の課題になっている。

 そこで、街の書店の在庫情報の「見える化」をめざす。ネット上で現在地周辺の書店在庫を横断的に検索できれば、ユーザーは購入したい本が、どの書店にあるかわかる。一方で、書店にとっても顧客を呼び込めるメリットがある。

 今後、図書館のオンライン蔵書検索システム(OPAC)と連携し、図書館の特定の本に貸し出し予約が多数入っている場合に、その本についての近隣書店の在庫情報をOPACの画面で見られるようにもする。すぐに、手に入れたい人向けに近くの書店で購入を促す狙いだ。

 この実証実験の第1段は6月下旬に始まった。プロジェクトを行う「版元ドットコム」「カーリル」などのサイトで、位置情報の共有を有効にすると、都市部では現在地から半径約5キロ、新刊書店が少ない地方ではさらに遠方の書店が表示される。

 現時点で在庫状況が確認できる書店は、ブックファースト、大垣書店、くまざわ書店、今井書店のグループや、一部の書店に限られるが、これからは全国に展開する大手書店や中小書店、出版社などにも呼びかけていく。

 プロジェクトの認知度を上げ、来年1月からは図書館の検索システムとも連携し、再来年1月には最終版をリリースする予定だ。

「ありそうでなかった仕組み」実現できた理由は……

 ただ、課題もある。ブックフ…

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この記事を書いた人
宮田裕介
文化部|メディア担当
専門・関心分野
メディア、放送行政、NHK