感情ぐちゃぐちゃだった母、「大丈夫」装った兄 5年たって思うこと

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関ゆみん
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 母の日が嫌になった。誕生日が嫌になった。正月が嫌になった。

 毎年欠かさず祝ってくれたし、おせち料理も一緒に作った。

 「何もかも、あの子とすべて結びつく。何をしても、あの子を思い出す」

 あの子。渡辺美希子さん(当時35)。京都アニメーションのコンテンツ制作部で美術・背景室長だった。人気アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の美術監督も務めた。

 2019年7月18日、第1スタジオ(京都市伏見区)が放火された。

 母の達子さん(74)=滋賀県=は美希子さんのスマホを鳴らしたが、つながらなかった。京都府宇治市の京アニ本社に駆けつけ、扉を開けた。社員だろうか、泣き声が聞こえた。

 悲嘆、喪失感、凶行を誰も止められなかったことへの怒り、自分も何もできなかったという自責の思い。感情はぐちゃぐちゃ。娘の話をするのがつらくて、人と会いたくなくなった。

 一方、美希子さんの兄の勇さん(45)=同=は、静かに症状が進んでいた。

 あの日、妻は妊娠中。自宅にとどまった。

 駆けつけたい。何かできることはないか。焦燥感は募った。

36人が命を落とした事件から5年。「あの子」を失った母と兄が、心に傷を負いながらも歩み続ける理由があります。

1年後、体からのサイン

 平静を装おうとした。「長男…

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