4月にスイス・ジュネーブで開催された高級時計の世界最大級の展示会ウォッチズ&ワンダーズで、エルメスが発表した新作時計「エルメス カット」は、平面の円と立体の丸みを合わせたような独特のフォルムで話題になった。時計の有名ブランドを経てエルメスの時計部門を長年統括するフィリップ・デロタル氏に制作の思いやエルメスの物づくりについて聞いた。
――女性向けの新作エルメス カットは36ミリというサイズ感で、日本では男性にも人気を呼んでいるようです。
これまでは男性用の時計を女性が借りてつけることはあっても、逆はなかった。初めてのケースになりえるかもしれません。
――エルメスというブランドの「腕時計のマーケットの中における強み」は、どういったところにあるのでしょうか。そして、エルメス カットはじめ今年の新作群には、そうした強みがどのように反映されているのでしょうか
強みは、エルメスの時計にはクリエーティブなエッセンスが詰まっていること。エルメス カットについていえば、たとえばタイポグラフィーがいい例です。そしてフォルムや色使い。それからシンプルで使い勝手がいいことでしょう。エルメス カットは非常にシンプルで、人間工学的につけ心地がいい。そういうことが全て調和され、スタイル的にバランスが取れた作品になった。まさにこれこそがエルメスの腕時計だと思っています。
――リューズ(時間調整のためのネジ)は通常、午後3時の位置に置きます。1時30分の位置に置いた理由は
このフォルムで、もし3時の位置にリューズがあると、バランスが崩れてしまうと思って現在の位置にしました。エルメス カットには日付表示もないのです。日付表示がないことによって、タイポグラフィーのエレガンスが保たれたと考えています。
――デロタル氏は、ヴァシュロン・コンスタンタン、ジャガー・ルクルト、パテックフィリップと名だたる高級時計ブランドで要職に就いたのち、エルメスで時計づくりの中心にいます。以前いたブランドと違って、エルメスは時計専門のメゾンではない
ファンタジーと対話 それがエルメスの強み
私がエルメスにきて、もう1…
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- 後藤洋平
- 編集委員|ファッション・メディア・文化担当
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