関東第一の6番打者の応援歌「声」 いきものがかりが書き下ろし
(23日、第106回全国高校野球選手権大会決勝 東東京・関東第一―京都国際)
関東第一(東東京)の応援歌は、打順ごとに決まっている。
6番打者で演奏されるのは「声」だ。音楽ユニットの「いきものがかり」が書き下ろした。
21日、神村学園との準決勝でも、大音量の「声」が響き渡った。
1点の先行を許した七回。先頭の5番打者がチーム初安打を放った。6番の小島想生選手(3年)は「声」の応援を背に、犠打を決めた。続く熊谷俊乃介選手(3年)が右翼線に二塁打を放って、同点に。次打者の敵失の間に逆転した。
いきものがかりが応援歌をつくったきっかけは、昨年6月にさかのぼる。コロナ禍で様々な制約があるなか部活動を続けてきた学生への応援歌を作る企画で、メンバーの吉岡聖恵さんと水野良樹さんが部活動が盛んな関東第一を訪れた。
2人は同校のサッカー、ハンドボール、剣道、チアリーダー、吹奏楽の各部などを回り、部員たちにインタビューした。
昨年5月に新型コロナが5類に移行されたことを受けて応援歌の意義や意味をテーマに、部員たちの思いを聞き取った。高校生が語った思いや言葉から、水野さんが歌詞を作ったという。
完成した曲は、同校の依頼で、吹奏楽部用に編曲された楽譜も書き下ろされた。昨年12月、曲は発売された。
吹奏楽部は応援歌として練習を重ね、野球部が8年ぶりに出場した今春の選抜大会で初めてお披露目された。乙幡和弘校長は「関東第一の新しいチャンステーマとして定着してほしい」と話す。
今夏の東東京大会でも、明るく耳に残るメロディーをスタンドから響かせ、チームに勢いを与えた。熊谷選手も、6番だった5試合で5安打2打点の活躍。「吹奏楽部の演奏があると気持ちが上がるし、応援されるとうれしい。力になる」と語った。
選抜に続いて戻ってきた夏の甲子園。12日の2回戦で、スタンドから応援したチアリーダー部の部長・近藤永麻(えま)さん(3年)は、コロナ禍の時期を「声を出すことができなくて、選手の力になりたいのに、動けない、何も出来ないもどかしさがあった」と振り返る。
つらかったあの頃の思い出や気持ちがダイレクトに詰まっているこの歌は、近藤さんにとっても自分を励ます大切な曲だ。
準々決勝のアルプス席で応援していた吹奏楽部長の奥山奏さん(3年)は「野球部が、甲子園という舞台まで来たということは本当にすごいこと。この曲を演奏することで、いい流れが来て欲しいという気持ちで演奏している」
関東第一は夏の甲子園大会では初の決勝に進んだ。決勝でも、アルプス席で「声」が後押しする。(佐野楓、西田有里)