自民党の石破茂・元幹事長は、安倍晋三首相や「ポスト安倍」候補と目される議員の中では政治的な立ち位置が最も真ん中に近い――。2017年衆院選の共同調査を分析すると、こんな石破氏の姿が浮かび上がった。石破氏は、有権者の回答から割り出した政治的立ち位置でみれば中間点(有権者の平均)より右側のA側に位置するが、党内全体でみれば真ん中よりもややB側寄りの立ち位置にある。
17年調査について、安倍首相、石破氏、岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官、野田聖子前総務相の5人について分析。グラフで見るとおり、5人ともA側にいるが、度合いがかなり違う。よりA側に強い順に安倍首相、野田氏、菅氏、岸田氏、石破氏となっている。
ABを隔てる識別力が高い質問への賛否をみると、その理由が見えてくる。
憲法改正への質問は5人とも賛成と答えたが、それ以外の項目ではかなり差が出た。安倍首相がめざす「自衛隊明記」の賛否では、2項削除が持論の石破氏が「どちらかと言えば反対」と回答。安倍、岸田、菅の3氏は無回答だった。野田氏は「どちらかと言えば賛成」と答えた。
北朝鮮問題をめぐっては、対話より圧力を優先すべきだという考え方について、石破氏が「どちらとも言えない」と回答したのに対し、安倍、岸田、菅、野田の4氏は賛成と答えた。
朝日東大調査が始まった03年以降、最も政治的立ち位置が変化したのは野田氏。03年は「中間よりややB側寄り」の立ち位置だったが、17年には安倍首相の次にA側寄りになった。
朝日新聞の5月の世論調査で「安倍首相の次の自民党総裁にふさわしい人」を聞く質問でトップだった小泉進次郎氏は、初当選した09年衆院選の調査のみに回答している。この時の数字を見ると、小泉氏は、先の5人に比べて最もA側寄りだった。
また、党内で「ハト派」の代表格とみなされた谷垣禎一・前総裁に着目すると、党の変容ぶりがよく表れている。下野した09年衆院選では安倍氏よりも、やや中間に近いA側だったが、自らが総裁として自衛隊を国防軍に改める憲法改正案をまとめた12年の衆院選では、よりA側にシフトし、安倍氏とほぼ同位置に。幹事長として迎えた14年では安倍氏よりも、A側寄りとなった。
ただ安倍氏は、12年に賛成と答えていた防衛力強化について、14年は無回答だった。一方で、谷垣氏は12年と14年でいずれも賛成と答えた。このため、14年は谷垣氏の方が安倍氏よりもA側寄りに位置づけられた可能性がある。