10

は、

富はどこへ 異次元緩和10年 5つのなぜ

  • 物価高で食費などがかさみ、仕送り額は減りました。日本で稼げると思ってきたけど、帰りたい気持ちもある。

    技能実習生

  • 日本人が海外に『出稼ぎ』に行く時代になっているんだと思いました。

    留学計画中の会社員

  • 円安でメリットを感じている人がいるのか。製造業でもほとんどいないと思う。

    ファーストリテイリングの柳井正氏

  • 円安が続けば、日本の魅力を知らない外国人が増えて、技能実習生が日本を選ばなくなってしまうのでは。

    技能実習生

  • 円安を追い風に四半期で過去最高の純利益。円安に進めば進むほど、業績にはプラスだ。

    建設機械大手の担当者

  • 約2億円するコンドミニアムが即金で相次ぎ売れることも。海外の投資家にとって1割くらい割安感がある。

    北海道ニセコ地区の不動産会社長

  • 変動金利が上がる心配もあるが、今回の返済期間は短い。金利が少しでも低いうちに変動金利で検討したい。

    住宅ローンを検討中の公務員

  • 投資のために変動金利で計1億円超を借り入れた。返済額が増え、収支がいつの間にかマイナスになりそうで怖い。

    不動産投資をする会社員

  • 仕事が増えず、新しい設備を導入するためにお金を借りても返すあてがない。同業者はやめていっている。

    金属部品会社の経営者

  • 成長がだんだん止まり、高齢化が進む経済環境で、お金さえ回せば事業が興るという発想が適さなくなった。

    西日本シティ銀行会長

  • 1年間で3度の値上げ。それでもコスト上昇分を全て吸収するのは難しい。

    日本マクドナルド広報

  • 日本の不動産は海外から見れば2割引きのバーゲンセール。投資にはいいタイミングだ。

    日本の不動産を紹介する中国人社長

  • どうせ高いのでスーパーにほとんど行かなくなった。物価高騰は生活に影響しまくりですよ。

    福祉関係のパート従業員

  • 本当は子どもたちにお肉や旬の果物を食べさせたい。でも、食費ぐらいしか削れないんです。

    北関東に住むシングルマザー

  • さらに値上げが続くようであれば、僕らのような中小企業にとっては危険な状態だ。

    トヨタの3次サプライヤー

  • 日用品の値上がり分は食費を削っている。久しぶりに好物のスナック菓子を食べたときの長男の喜ぶ姿に胸を締め付けられた。

    都内に住む派遣社員

  • 100万円の資金が1000万円に増えた。この5年ほどは投資家にとってチャンスタイムだった。

    画家兼個人投資家

  • ストレスが激減し、健康的な生活になった。共働きで一定の収入があれば30~40代でもFIREはできる。

    FIRE生活の元会社員

  • いまがバブルかって? お金を持ってる人の話やないですか。若い客から減っていき、徐々に「富裕層の乗り物」になっていきました。

    タクシー会社長

  • 金利が低い定期預金を解約して株を買った。なぜ株価だけ上がるのか。もうかってもなんとなく罪悪感がある。

    主婦

  • 人手不足で、正社員と同じ仕事をしていてもアルバイトにはボーナスが出ない。日本って、こんなに貧しかったっけ。

    海外で和食の店を開きたい元歯科衛生士

  • (娘の)教育費はこれからも増えていく。会社は給与の引き上げには消極的。実質的には賃下げが続いている。

    大手化学メーカーの子会社員

  • 値上げをお願いしている小売業として、値上げした分は賃金が上がらないと消費につながらない。賃上げをぜひ実行していきたい。

    ローソン竹増貞信社長

  • 水増し請求でもしないと、とてもやっていけない。求人をかけても全然集まらない。

    東日本にある町工場の社長

  • トリクルダウンはついに中小企業に落ちて来なかった。それだけでも政治に失望した。

    北海道中小企業家同友会の元代表

  • 物価高で食費などがかさみ、仕送り額は減りました。日本で稼げると思ってきたけど、帰りたい気持ちもある。

    技能実習生

  • 日本人が海外に『出稼ぎ』に行く時代になっているんだと思いました。

    留学計画中の会社員

  • 円安でメリットを感じている人がいるのか。製造業でもほとんどいないと思う。

    ファーストリテイリングの柳井正氏

  • 円安が続けば、日本の魅力を知らない外国人が増えて、技能実習生が日本を選ばなくなってしまうのでは。

    技能実習生

  • 円安を追い風に四半期で過去最高の純利益。円安に進めば進むほど、業績にはプラスだ。

    建設機械大手の担当者

  • 約2億円するコンドミニアムが即金で相次ぎ売れることも。海外の投資家にとって1割くらい割安感がある。

    北海道ニセコ地区の不動産会社長

  • 変動金利が上がる心配もあるが、今回の返済期間は短い。金利が少しでも低いうちに変動金利で検討したい。

    住宅ローンを検討中の公務員

  • 投資のために変動金利で計1億円超を借り入れた。返済額が増え、収支がいつの間にかマイナスになりそうで怖い

    不動産投資をする会社員

  • 仕事が増えず、新しい設備を導入するためにお金を借りても返すあてがない。同業者はやめていっている。

    金属部品会社の経営者

  • 成長がだんだん止まり、高齢化が進む経済環境で、お金さえ回せば事業が興るという発想が適さなくなった。

    西日本シティ銀行会長

  • 1年間で3度の値上げ。それでもコスト上昇分を全て吸収するのは難しい。

    日本マクドナルド広報

  • 日本の不動産は海外から見れば2割引きのバーゲンセール。投資にはいいタイミングだ。

    日本の不動産を紹介する中国人社長

  • どうせ高いのでスーパーにほとんど行かなくなった。物価高騰は生活に影響しまくりですよ。

    福祉関係のパート従業員

  • 本当は子どもたちにお肉や旬の果物を食べさせたい。でも、食費ぐらいしか削れないんです。

    北関東に住むシングルマザー

  • さらに値上げが続くようであれば、僕らのような中小企業にとっては危険な状態だ。

    トヨタの3次サプライヤー

  • 日用品の値上がり分は食費を削っている。久しぶりに好物のスナック菓子を食べたときの長男の喜ぶ姿に胸を締め付けられた。

    都内に住む派遣社員

  • 100万円の資金が1000万円に増えた。この5年ほどは投資家にとってチャンスタイムだった。

    画家兼個人投資家

  • ストレスが激減し、健康的な生活になった。共働きで一定の収入があれば30~40代でもFIREはできる。

    FIRE生活の元会社員

  • いまがバブルかって? お金を持ってる人の話やないですか。若い客から減っていき、徐々に「富裕層の乗り物」になっていきました。

    タクシー会社長

  • 金利が低い定期預金を解約して株を買った。なぜ株価だけ上がるのか。もうかってもなんとなく罪悪感がある。

    主婦

  • 人手不足で、正社員と同じ仕事をしていてもアルバイトにはボーナスが出ない。日本って、こんなに貧しかったっけ。

    海外で和食の店を開きたい元歯科衛生士

  • (娘の)教育費はこれからも増えていく。会社は給与の引き上げには消極的。実質的には賃下げが続いている。

    大手化学メーカーの子会社員

  • 値上げをお願いしている小売業として、値上げした分は賃金が上がらないと消費につながらない。賃上げをぜひ実行していきたい。

    ローソン竹増貞信社長

  • 水増し請求でもしないと、とてもやっていけない。求人をかけても全然集まらない。

    東日本にある町工場の社長

  • トリクルダウンはついに中小企業に落ちて来なかった。それだけでも政治に失望した。

    北海道中小企業家同友会の元代表

  • 物価高で食費などがかさみ、仕送り額は減りました。日本で稼げると思ってきたけど、帰りたい気持ちもある。

    技能実習生

  • 日本人が海外に『出稼ぎ』に行く時代になっているんだと思いました。

    留学計画中の会社員

  • 円安でメリットを感じている人がいるのか。製造業でもほとんどいないと思う。

    ファーストリテイリングの柳井正氏

  • 円安が続けば、日本の魅力を知らない外国人が増えて、技能実習生が日本を選ばなくなってしまうのでは。

    技能実習生

  • 円安を追い風に四半期で過去最高の純利益。円安に進めば進むほど、業績にはプラスだ。

    建設機械大手の担当者

  • 約2億円するコンドミニアムが即金で相次ぎ売れることも。海外の投資家にとって1割くらい割安感がある。

    北海道ニセコ地区の不動産会社長

  • 変動金利が上がる心配もあるが、今回の返済期間は短い。金利が少しでも低いうちに変動金利で検討したい。

    住宅ローンを検討中の公務員

  • 投資のために変動金利で計1億円超を借り入れた。返済額が増え、収支がいつの間にかマイナスになりそうで怖い。

    不動産投資をする会社員

  • 仕事が増えず、新しい設備を導入するためにお金を借りても返すあてがない。同業者はやめていっている。

    金属部品会社の経営者

  • 成長がだんだん止まり、高齢化が進む経済環境で、お金さえ回せば事業が興るという発想が適さなくなった。

    西日本シティ銀行会長

  • 1年間で3度の値上げ。それでもコスト上昇分を全て吸収するのは難しい。

    日本マクドナルド広報

  • 日本の不動産は海外から見れば2割引きのバーゲンセール。投資にはいいタイミングだ。

    日本の不動産を紹介する中国人社長

  • どうせ高いのでスーパーにほとんど行かなくなった。物価高騰は生活に影響しまくりですよ。

    福祉関係のパート従業員

  • 本当は子どもたちにお肉や旬の果物を食べさせたい。でも、食費ぐらいしか削れないんです。

    北関東に住むシングルマザー

  • さらに値上げが続くようであれば、僕らのような中小企業にとっては危険な状態だ。

    トヨタの3次サプライヤー

  • 日用品の値上がり分は食費を削っている。久しぶりに好物のスナック菓子を食べたときの長男の喜ぶ姿に胸を締め付けられた。

    都内に住む派遣社員

  • 100万円の資金が1000万円に増えた。この5年ほどは投資家にとってチャンスタイムだった。

    画家兼個人投資家

  • ストレスが激減し、健康的な生活になった。共働きで一定の収入があれば30~40代でもFIREはできる。

    FIRE生活の元会社員

  • いまがバブルかって? お金を持ってる人の話やないですか。若い客から減っていき、徐々に「富裕層の乗り物」になっていきました。

    タクシー会社長

  • 金利が低い定期預金を解約して株を買った。なぜ株価だけ上がるのか。もうかってもなんとなく罪悪感がある。

    主婦

  • 人手不足で、正社員と同じ仕事をしていてもアルバイトにはボーナスが出ない。日本って、こんなに貧しかったっけ。

    海外で和食の店を開きたい元歯科衛生士

  • (娘の)教育費はこれからも増えていく。会社は給与の引き上げには消極的。実質的には賃下げが続いている。

    大手化学メーカーの子会社員

  • 値上げをお願いしている小売業として、値上げした分は賃金が上がらないと消費につながらない。賃上げをぜひ実行していきたい。

    ローソン竹増貞信社長

  • 水増し請求でもしないと、とてもやっていけない。求人をかけても全然集まらない。

    東日本にある町工場の社長

  • トリクルダウンはついに中小企業に落ちて来なかった。それだけでも政治に失望した。

    北海道中小企業家同友会の元代表

【更新】2023/3/3

植田和男次期総裁候補のコメントを追加

円安や物価高など、日本経済に変化が訪れています。

そこで注目されているのが、日本銀行の金融緩和。金利を下げ、お金の流れをよくする政策です。2023年4月に任期を終える黒田東彦総裁が、旗を振ってきました。

始めた当時、日本は物価が下がるデフレでした。抜け出すために、大胆な金融政策として始めた異次元緩和。以来10年、私たちの暮らしはよくなったのでしょうか。五つのなぜ?から探ります。

長期金利の推移

金融緩和、歯車はかみ合った?

目的
作用
1
円相場
2
金利
3
物価
4
株価
5
賃金
日銀
緩和政策で金利を下げる
労働者
賃金アップ
民間銀行お金を貸しやすく
企業
借金を元手に投資し
業績アップ
Chapter1

円相場

対ドル円相場(1ドル=円)

歴史的な円安

かつて円高に苦しんだ日本。2011年10月には75円まで進みましたが、異次元緩和にも助けられ、円安傾向に転じました。さらに、2022年は年初の115円が一時151円の円安に。背景に、日米の金融政策の違いがありました。

なぜ昨年急に円安になったの?

米国が金利を上げたのに対し、日本は低金利のままだから

編集委員のPOINT解説

高金利求め、世界を駆け巡るお金

円安や円高になる要因の一つが、日本と海外の金利の差。水が高いところから低いところへ流れるのとは逆に、お金は金利の低いところから高いところへ流れます。2022年のように金利差が広がると、円を売りドルを買う(円安ドル高)動きが強まります。(中川透)​

  • 技能実習生
    物価高で食費などがかさみ、仕送り額は減りました。日本で稼げると思ってきたけど、帰りたい気持ちもある。
  • 留学計画中の会社員
    日本人が海外に『出稼ぎ』に行く時代になっているんだと思いました。
  • ファーストリテイリングの柳井正氏
    円安でメリットを感じている人がいるのか。製造業でもほとんどいないと思う。
  • 建設機械大手の担当者
    円安を追い風に四半期で過去最高の純利益。円安に進めば進むほど、業績にはプラスだ。
  • 技能実習生
    円安が続けば、日本の魅力を知らない外国人が増えて、技能実習生が日本を選ばなくなってしまうのでは。
  • 北海道ニセコ地区の不動産会社長
    約2億円するコンドミニアムが即金で相次ぎ売れることも。海外の投資家にとって1割くらい割安感がある。
Chapter2

金利

住宅ローン金利の推移

フラット35最低金利、1月

日本だけ続く低金利

消費や投資を増やすため、思い切った金融政策として始めた異次元緩和。2016年には金利をマイナスにして強化しました。日本が低金利を続ける一方、コロナ禍からの経済回復が進む海外では、物価高を抑えるための利上げが広がっています。

なぜ日本は金利を上げないの?

物価上昇がまだ不十分、と日銀が考えているから

もし金利が1%上がったら借金は

住宅ローンはモゲチェックの試算で、変動金利が1%上昇した場合の変動金利利用者全体の増加額。国債費は政府の試算で、10年国債の金利が1%上昇した場合の2026年度時点の増加額

編集委員のPOINT解説

今後の金利上昇、新たな負担も

金利を上げるかどうかの判断は、物価の動きによります。物価が高騰すれば金利を上げ、日銀は景気の過熱を冷やして物価を抑えようとします。金利を上げると、政府の借金の利払いや私たちの住宅ローン返済が増え、新たな負担も生まれます。​

  • 住宅ローンを検討中の公務員
    変動金利が上がる心配もあるが、今回の返済期間は短い。金利が少しでも低いうちに変動金利で検討したい。
  • 不動産投資をする会社員
    投資のために変動金利で計1億円超を借り入れた。返済額が増え、収支がいつの間にかマイナスになりそうで怖い。
  • 金属部品会社の経営者
    仕事が増えず、新しい設備を導入するためにお金を借りても返すあてがない。同業者はやめていっている。
  • 西日本シティ銀行会長
    成長がだんだん止まり、高齢化が進む経済環境で、お金さえ回せば事業が興るという発想が適さなくなった。
  • 日本の不動産を紹介する中国人社長
    日本の不動産は海外から見れば2割引きのバーゲンセール。投資にはいいタイミングだ。

新築マンションの平均価格

住宅ローン金利が下がった一方、投資マネーの影響も受けた都市部のマンションでは、価格の上昇が続きました。

東京都
2011年度
2021年度
価格
4548.7万円
5511.4万円
住宅面積
66.4m2
58.1m2
世帯年収
830.8万円
812.2万円
首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)
2011年度
2021年度
価格
4210.7万円
4913.4万円
住宅面積
69.2m2
59.3m2
世帯年収
773.4万円
771.4万円
近畿圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県)
2011年度
2021年度
価格
3446.5万円
4477.6万円
住宅面積
74.2m2
68.2m2
世帯年収
714.7万円
795.9万円
東海圏(愛知県、岐阜県、静岡県、三重県)
2011年度
2021年度
価格
3242.9万円
4261.9万円
住宅面積
80.0m2
63.5m2
世帯年収
785.1万円
780.7万円

独立行政法人住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」から(2011年度、21年度)

Chapter3

物価

消費者物価指数

生鮮食品除く総合、前年比

2%目標を通り過ぎた物価高

異次元緩和を始めた際はまだデフレで、物価上昇2%の目標を掲げました。しかし、世界で物価が大きく上がった2022年、日本の上昇率も12月に前年比4.0%と、第2次石油危機以来41年ぶりの高水準を記録しました。

物価が上がると困りますよね?

悪い上昇は困りますが、良い上昇もあります

編集委員のPOINT解説

コストが上がるか、消費が増えるか

最近の物価高は、輸入原材料などコスト(費用)の上昇が主因です。一方で、商品への消費意欲が高まったことによるよい物価上昇もあります。物価が上がらないと賃金も伸びにくく、両者の足並みがそろうことが理想的です。​

  • 福祉関係のパート従業員
    どうせ高いのでスーパーにほとんど行かなくなった。物価高騰は生活に影響しまくりですよ。
  • 北関東に住むシングルマザー
    本当は子どもたちにお肉や旬の果物を食べさせたい。でも、食費ぐらいしか削れないんです。
  • トヨタの3次サプライヤー
    さらに値上げが続くようであれば、僕らのような中小企業にとっては危険な状態だ。
  • 日本マクドナルド広報
    1年間で3度の値上げ。それでもコスト上昇分を全て吸収するのは難しい。
  • 都内に住む派遣社員
    日用品の値上がり分は食費を削っている。久しぶりに好物のスナック菓子を食べたときの長男の喜ぶ姿に胸を締め付けられた。
Chapter4

株価

日経平均株価

緩和で押し上げられた株価

10年前に1万円前後だった日経平均株価。異次元緩和を機に円安の追い風が吹き、株高になりました。企業の業績が回復する期待とともに、日銀が株式を幅広く買う異例の政策も強化されて、株価は下支えされてきました。

株高でも豊かさを感じられないのはなぜ?

恩恵が偏り、実感を得られない人も多くいます

編集委員のPOINT解説

持つ人と持たない人、資産の格差も

株価が上がれば、私たちの年金資産の運用成績がよくなるなどのプラス効果が生まれます。ただ、直接の恩恵を受ける株式保有者の比率は1~2割ほど。株を買って投資をする余力のある人とない人の資産格差も際立ちます。​

  • 画家兼個人投資家
    100万円の資金が1000万円に増えた。この5年ほどは投資家にとってチャンスタイムだった。
  • FIRE生活の元会社員
    ストレスが激減し、健康的な生活になった。共働きで一定の収入があれば30~40代でもFIREはできる。
  • タクシー会社長
    いまがバブルかって? お金を持ってる人の話やないですか。若い客から減っていき、徐々に「富裕層の乗り物」になっていきました。
  • 主婦
    金利が低い定期預金を解約して株を買った。なぜ株価だけ上がるのか。もうかってもなんとなく罪悪感がある。
Chapter5

賃金

米国と日本の平均賃金

10年間上がらなかった賃金

2012年に430万円だった平均賃金は、2021年で444万円(OECD〈経済協力開発機構〉統計)。この間に海外の多くの国で上がったのに、日本はほぼ横ばいが続いてきました。賃金が伸びないことで、豊かさを感じにくい状況が続いています。

賃上げ、妨げているものは?

抱え込む企業、潤う株主、不透明な先行き…

編集委員のPOINT解説

働き手への還元、後回しに

景気の先行きが不透明で、企業は投資に慎重で利益をお金で抱え込んでいます。賃金は一度上げると下げにくく、賃上げにも及び腰。一方で、株価を意識して株主への還元は増やしました。手薄だった「人への投資」を今後どう進めるかが問われています。​

  • 海外で和食の店を開きたい元歯科衛生士
    人手不足で、正社員と同じ仕事をしていてもアルバイトにはボーナスが出ない。日本って、こんなに貧しかったっけ。
  • 大手化学メーカーの子会社員
    (娘の)教育費はこれからも増えていく。会社は給与の引き上げには消極的。実質的には賃下げが続いている。
  • 東日本にある町工場の社長
    水増し請求でもしないと、とてもやっていけない。求人をかけても全然集まらない。
  • ローソン竹増貞信社長
    値上げをお願いしている小売業として、値上げした分は賃金が上がらないと消費につながらない。賃上げをぜひ実行していきたい。
  • 北海道中小企業家同友会の元代表
    トリクルダウンはついに中小企業に落ちて来なかった。それだけでも政治に失望した。
  • 仕事を掛け持ちする契約社員
    アベノミクスでも、自分たちのようなおしりは上がらなかった。やっぱり実入りが欲しい。だから、長時間労働せざるを得ない

年代別の平均月収の変化

「悪い物価上昇」が起こった一方、月収はほぼ横ばいが続き、最低賃金の全国平均も193円の上昇にとどまりました。

20〜24歳

最低賃金(時給)の全国平均は2011年…737円、 2021年…930円

残業代などを除いた月額を表示 小数点第2位を四捨五入

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から(2011年、21年)

植田和男 次期総裁候補は

いずれも2023年2月24日、衆院での所信聴取と質疑で
  • 金融政策に対する所信で

    金融緩和を継続し、経済をしっかりと支え、企業が賃上げをできる環境を整える

  • 物価の2%目標を掲げた2013年の政府と日銀の共同声明について

    共同声明を直ちに見直す必要があるとは考えていない

  • (長期金利を操作する政策である)イールドカーブ・コントロールへの見解

    様々な副作用を生じさせている面は否定できない

  • 異次元緩和の効果と副作用を包括的に検証するかどうか問われ

    必要に応じて検証を行っていきたい

豊かさを実感できる社会のために

世の中に出回る1万円札は、昨年末で116兆円分。10年前の1.5倍に増えました。

金利を低く保つ金融緩和でお金の流れはよくなるはず、でした。お金は量としてはあふれていますが、私たちの懐が温まり、生活の質が上がったとの実感はあるでしょうか。

働いても賃金が伸びない一方で、物価が急上昇しています。老後不安からお金が消費に回らず、タンスや銀行口座に眠っています。預金をしても低金利で利子がつかず、追い立てられるように、投資へ走る人がいます。

企業は低金利で資金を借りやすくなりましたが、新たな投資に慎重です。稼いだ利益を株主への配当として増やしていますが、働き手への還元は後回し。政府は国債の利子払いを低く抑えられていますが、低金利のもとで発行を増やし続けて、財政のたがが緩みっぱなしです。

異次元の金融緩和が始まって10年、お金の流れにひずみや目詰まりはないでしょうか。ご紹介した「五つのなぜ」を始め、考えるべきことは多くあります。

富はどこへ。その行方を探り、経済の問題点を考える。日本銀行の総裁が代わる今年は、その格好のタイミングです。私たちが豊かさを実感できる社会へ向かう、出発点の営みとなるはずです。(編集委員・中川透)

  翻译: