米水泳連盟、トランスジェンダー選手の出場めぐり新方針 「不当な優位性」など判断

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画像説明, 米水泳連盟は、トランスジェンダー選手のエリートレベルの大会への出場基準を発表した

米水泳連盟は1日、トランスジェンダー選手の出場に関する新方針を発表した。アメリカでは昨年、トランスジェンダーの女性競泳選手が大会記録を塗り替えて優勝するなどし、議論が巻き起こっていた。

同連盟によると、3人のメンバーからなる医療パネルが今後、「男性としての身体的発育歴」がトランスジェンダー選手に不当な優位性を与えているかどうか、判断するという。

また、大会の36カ月前から男性ホルモンのテストステロン値の検査も実施される。

1日に発表された新方針は直ちに発効した。

連盟の主張

米水泳連盟は声明で、「これまでも、そしてこれからも、ジェンダー平等と、シスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が同じ人)とトランスジェンダーの女性の包括性と競技に参加する権利を支持する。それと同時に、エリートレベルの競技における公平性も強く支持する」とした。

そして、エリートレベルのアスリートのための方針は、「男性と女性のカテゴリーにおける競争力の差と、それがエリートレベルでの接戦に不利な状況をもたらすことを認めるもの」だと説明した。

連盟は、2021年のトップクラスの女性アスリートの記録が、同年の男性競技では平均536位以下にあたることを示すデータを引用。

新方針は、「科学と医学的根拠に基づく手法に依拠し、エリートレベルのシスジェンダー女性に公平な競技の場を提供する」とした。

そして、同方針は「男性の思春期と生理機能に関連する優位性を緩和する」役割を果たすと付け加えた。

出場基準変更の背景

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画像説明, トランスジェンダーの女性競泳選手、リア・トーマスさんは昨年12月の大会で2位のチームメイトより38秒も速くゴールした(2022年1月撮影)

アメリカでは、2019年春にホルモン補充療法を開始するまでの3シーズン、男子選手として活動していたペンシルヴェニア大学のトランスジェンダー選手、リア・トーマスさんが女子の競技に出場したことをきっかけに、議論が巻き起こっていた。

トーマスさんは昨年12月にオハイオ州で開催された大会で、2位のチームメイトに38秒の差をつけて優勝。全米大学体育協会(NCAA)主催の選手権大会への出場権を獲得した。

チームメイトたちは1日、トーマスさんを支持する声明を発表した。

「ペンシルヴェニア大学女子水泳・飛び込みチームのメンバーとして、またリア・トーマスのチームメイトとして、私たちはリアのトランジション(ホルモン治療や性別適合手術などで身体の性を自認する性に適合させること)への支持を表明する」

「私たちは彼女を人として、チームメイトとして、友人として大切に思っている」と、チームメイトは米メディア宛ての声明で述べた。そして、チームの一部メンバーが匿名で報道機関に送った声明は、「多様な背景を持つ39人の女性で構成されるペンシルヴェニア大学チーム全体の感情や価値観、意見を代表するものではない」と反発した。

本人や学生の親は

トーマスさんはこの議論について公の場で言及するのを拒否しており、水泳専門サイトSwimSwamのポッドキャストで1度だけインタビューに応じた。

「これについて読んだり、関わったりするのは健全ではないので、そうしないようにしている。これについて言えるのはそれだけです」

チームに所属する学生の家族は先月、NCAAに書簡を送り、トランスジェンダーの競泳選手のためにルールを変更するよう求めた。

ある保護者は匿名で、「今年はもうチャンスがない。選手たちは一生懸命練習しているが、リアに勝てないと分かっている」と米紙ワシントン・ポストに語った。