ロシア、ウクライナ4州を「公式併合」へ プーチン氏が30日に調印
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、30日午後(日本時間同日夜)に開かれる調印式で、ウクライナの4州を併合する内容の文書に調印する。4州で行われた自称「住民投票」の結果を受けたものだが、西側諸国は投票は見せかけだったと非難している。
ロシアが併合を宣言する見通しとなっているのは、ウクライナの東部ルハンスク、ドネツク、南部ザポリッジャ、ヘルソンの4州。
これらの州では23日から5日間にわたって、自称「住民投票」が実施された。ロシアが支援する各州当局は、投票したほぼ全員がロシアへの併合を支持したとしている。
こうしたことを背景に、プーチン氏は30日にクレムリン(大統領府)で重要な演説をする予定だ。
ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は29日、「明日の午後3時(日本時間午後9時)に、大クレムリン宮殿の聖ゲオルギー・ホールで、新たな領土をロシアに編入するための調印式が開かれる」と説明した。
モスクワの赤の広場には、すでにステージが設置されており、4州はロシアの一部だと宣言する看板が据えられている。夜にはコンサートが予定されている。
ウクライナ東部のロシアが支援する分離派の指導者2人と、南部のロシアが任命した高官2人も、それぞれ別の協定に調印する予定。
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今回の調印は、2014年にロシアがクリミアを併合した際のものと似ている。当時は、信用度の低い住民投票が行われたのに続き、クレムリンで調印があり、議会で大統領が勝利演説をした。ただ、国際社会の大部分はこの併合を全く承認しておらず、今回も同じことになるとみられる。
ロシア議会の上下両院は、クリミア併合の際にもしたように、併合条約を来週、正式に批准する見通し。その後、プーチン氏が10月4日に、上院で演説するとみられている。この日はプーチン氏の70歳の誕生日の3日前に当たる。
「住民投票」に内外から非難
ロシア側がウクライナ国土の15%に当たる地域で進めた自称「住民投票」は、わずか数日の予告期間の後に実施された。独立した監視は実施されなかった。
選管当局者らが武装兵士を伴い、民家を1軒ずつ訪ねていたことが、写真で記録されている。ロシア国営メディアは、安全確保のために武装警備員が出ていたと説明。ただ、住民を威嚇する効果もあったことは明らかだった。
ザポリッジャ州エネルホダルの女性は、投票の方法について、「口頭で答えなくてはならず、兵士が回答を書類に書き込んで保管する」とBBCに証言した。
こうした投票に対し、内外から非難の声が上がっている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「偽の住民投票」に価値はなく、現実を変えるものではないと批判。「ウクライナ領土の一体性は元どおりになる。ロシアが(投票の)結果を承認しても、私たちは非常に厳しい反応を示すことになる」と述べた。
アメリカは、仕組まれた住民投票が実施されたとし、ロシアに制裁を科すと発表している。欧州連合(EU)加盟各国も、投票に関わった人物に対する制裁など、8弾目となる対応措置を検討している。
ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は29日、ウクライナでは住民らが時には銃で脅されながら、自宅や職場から投票所に連れて行かれたと主張。「自由で公正な投票とは正反対だ。平和とも正反対であり、一方的な命令に基づく平和だ」と述べた。
ロシアがウクライナ侵攻を開始してから7カ月が過ぎたが、ロシアは併合を決めた4つの州のどれも、完全には支配できていない。現在も4州全てで戦闘が続いている。
東部のルハンスク州では大部分をロシアが制圧しているが、ドネツク州ではその比率は6割にとどまる。
南部のザポリッジャ州では、ウクライナが州都をしっかりと掌握。ヘルソン州ではウクライナが反転攻勢を進めている。
ロシアが任命した州の高官らは、数カ月前からロシアによる併合を求めていた。しかし、9月になってウクライナが次々と反撃を成功させており、ロシアは手を焼いているとみられる。
ウクライナ軍はこれまでに、北東部の大部分を奪還している。同軍は29日、ドネツク州の要衝リマン市でロシア軍を包囲していると明らかにした。
プーチン氏は先週、予備役の部分的な動員を発表。ロシアは自国の領土とみなす土地を、核兵器を含むあらゆる手段を使って守ると脅した。
ウクライナの占領地をロシアに併合することで、プーチン氏は、ロシア領土が西側の兵器で攻撃されていると主張することが可能になる。また、西側の一部がウクライナへの軍事援助を停止させることも、同氏は期待しているとみられる。
一方、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、見せかけの投票が戦場に影響を与えることはないと強調している。
ロシアの予備役動員をめぐっては、対象ではないはずの国民が招集されるなど、混乱が生じている。プーチン氏は、間違いがあったと認めている。
各地で抗議デモが発生しており、数十の都市でこれまでに約2400人が逮捕されている。また、多くのロシア人男性が国境を越えて隣国に出ている。
カザフスタンだけでも、27日までにロシアから9万8000人が入国したと報告されている。ジョージアとの国境には長い列ができている。フィンランドは、観光や他のEU諸国への渡航を目的としたロシア人の入国を、30日から大幅に制限すると発表している。
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