楽天G、約2650億円のドル債発行へ-利回り12%超は日本企業最高
日向貴彦-
上場する国内事業会社のドル債で最高利回り-ブルームバーグデータ
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発行額は当初想定の10億ドルから増額、ジャンク債への需要強く
楽天グループは31日、ドル建て社債の発行額が18億ドル(約2650億円)に決まったと発表した。日本企業のドル建て債として過去最高の利回りで投資家の需要を集め、資金繰りに対する過度な懸念はいったん落ち着くとの見方が出ている。
償還期間3年のドル建て債を発行する。発行利率は11.25%。ブルームバーグのデータによると、発行価格と額面価格との差を踏まえた利回りは12.125%と、日本で上場する事業会社が発行したドル債として過去最高を更新した。
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S&Pグローバル・レーティングによる格付けが「BB」と投資適格に満たない楽天Gの社債は「ジャンク債」と位置付けられる。ハイリスク・ハイリターンを選好する海外投資家の間では人気が集まりやすく、発行額は当初想定した10億ドルから増額した。利回りも当初提示していた12.5%程度を下回った。
SBI証券の森行眞司シニアアナリストは、起債によって最大の懸念だった資金繰りができることが分かり、「フェーズが変わった」とみる。「12%の利回りは高い」とした上で、「現在赤字が縮小しており、業績がさらに回復すれば繰り上げ償還や借り換えができ、利払い余力も出てくる」と続けた。
楽天Gの広報担当者はブルームバーグの取材に対し、投資家の需要が旺盛だったため発行額を増やしたと説明した。発行条件はマーケットが決めるものだとし、詳細のコメントは差し控えるとした。
流通市場でも今回債への需要の強さがうかがえる。ブルームバーグのデータによると、発行時を下回る利回り10.75%程度で取引されている。SBI証の森行氏は「海外ではリスクよりリターンあれば投資できる」と指摘。社債投資家は「株主よりも現実的」だとし、楽天Gの先行きを占う上で今回の発行額の増額には「意味がある」との見方を示した。
同社は今回調達する資金で2024年に満期を迎えるドル建てシニア債を全額借り換える考え。高い発行利回りは、国内外で巨額の社債償還を控える楽天Gにとって利払い負担の増加につながる面もある。
ブルームバーグ・インテリジェンスのクレジットアナリストのシャロン・チェン氏は、起債で短期的な借り換えニーズは減るものの、ドル建て債の償還時期が27年に後ずれしたことで、同年から可能になるユーロ建て永久劣後債の早期償還は見送りとなるリスクが高まる可能性があると分析した。
楽天モバイルの優位性
24年、25年にかけては楽天Gとグループ会社で総額約8400億円の社債の償還を迎える。信用力評価の改善に向けてモバイル事業の黒字化が喫緊の課題となる中、25日に取材に応じた三木谷浩史社長は今後、法人への積極的な営業に加えて電波がつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」を5月から展開していく方針を示した。
野村証券の増野大作シニアアナリストはリポートで、月額料金(データ無制限プラン)が競合他社の半額以下であることが楽天モバイルの「最大の優位性」だとし、今後どのように消費者にネットワーク品質を訴求できるかが重要だと指摘。今後は新たな顧客獲得策の導入に注目するとしている。