アマゾンの出品サービスを使って収入を増やすことに成功したケビン・パク。
Kevin Pak
2017年、ケビン・パク(Kevin Pak)は大学を中退し、パーソナルトレーナーになることを決意した。彼はサンティアゴ・キャニオン・カレッジに通い、運動学と経営学の準学士号を取得していた。
「退学を決めたのは、カレッジで学んでいたことが、自分のやりたいことにあまり役立たないと気づき始めたからです。
当時の私の目標は、ただ自分の生活を維持し、できるだけ多くのお金を稼ぐことでした。だから、パーソナルトレーニングの道に進むべきだと思ったんです」(パク)
当初パクは、月に数千ドルを稼ぐことで満足していた。1年後、限られた時間の中で利益を得ているだけでは、収入の拡大は難しいことに気がついた。この時点でパクは、他の人をトレーニングしたり、自分でトレーニングしたり、その合間にクライアントを待ったりして、1日に約12時間をジムで過ごしていた。
「50歳になってもパーソナルトレーニングをして、その間ずっと同じ金額を稼いでいる自分は想像できませんでした。
家庭を持ちたいならこのやり方ではうまくいかない。自分の時間をお金と交換しない方法を見つける必要があると気がついたのです」
パクは、自分の人生においてもっと何かをしなければならないというプレッシャーも感じていた。 彼はまだ実家暮らしで、長期的なキャリア目標も具体的に描けていなかった。 自分の将来がどうなるか分からないことで怖くなり、早い段階で退学を決断したことに自信が持てなくなっていた。
「私はアジア系の家庭で育ったので、いろいろと期待されていましたし、母は私に医療分野で活躍することを望んでいました。
だからプレッシャーも相当あったし、『ねえ、これからの人生、どうするの?』と言われることもよくありました」
2018年3月、パクはネットでお金を稼ぐための新たな方法を探し始めた。最初に思いついたのが、アマゾンの出品サービス(FBA:フルフィルメントby Amazon(FBA)だった。
最初はそれが正当なもので、誰でもお金を稼ぐことができるのか、確信が持てなかった。しかし、ユーチューブ(YouTube)の動画を何度も見て、これは本物だと確信した。パクは、タナー・J・フォックス(Tanner J Fox)というアマゾン(Amazon)の出品者が作った有料講座に登録した。
Insiderが確認したパクのアマゾン出品者アカウントのスクリーンショットによると、2022年、パクは28万9000ドル(約3760万円、1ドル=130円換算)の売上と12万7000ドル(約1650万円)の利益を上げたという。
売上が最も多かった月は2022年12月で、7万3000ドル(約950万円)相当の商品を売った。最も売上の少なかった月は同年9月で、約1万3000ドル(約170万円)だった。彼は主に犬や子ども用のおもちゃを販売しているが、この月はいくつかの商品が欠品してしまったのだという。
彼はその有料講座から多くのことを学んだが、足りない要素もあり、多くの資金を失ったと話す。以降では、パク自身が失敗経験から学んだ5つのポイントを紹介する。
立ち上げ時の失敗
最大の失敗は、販売商品を選定する際に起こった。
パクは、Eコマースの市場分析を行う「ジャングル・スカウト」というソフトウェアツールを使った。このアプリケーションを使うと、需要と収益が高く、競合が少なく、利益率30%以上の商品を探すことができるのだ。彼は、これだけで勝てる商品が見つかると思った。そして、アリババから仕入れる「動物忌避機」と「レターボード」を最初に売る商品に決めた。
最初は動物忌避機がよく売れて、在庫を補充するために2回目の注文をした。 しかし、電装部品の不具合で悪い評価が相次ぐようになり、売上が落ち始めた。
パクはここで、注文したメーカーが粗悪品を出荷していることに気付いたのだ。この失敗で9000〜1万ドル(約117万〜130万円)の損失を被ったという。
一方、レターボードはまったく売れなかった。すでに好評を得ていたライバルと同じ商品を出品していたからだ。パクの商品は競合と比べて、レビューがついていないことを除けば、何も変わらなかった。彼は売れ残った在庫を中古品店に販売したものの、4000〜5000ドル(52万〜65万円)の損失を出したという。
利益への転換点
1. 他社との差別化を図る
彼を成功に導いた最大の改善点は、競合他社との差別化を図る方法を学んだことだ。
「顧客にアピールできるUSP(Unique Selling Proposition:自社が持つ独自の強み)があれば、競争は無意味になることが分かったのです。そこで、顧客の視点に立ってこの商品をどう改善できるか考えることにしました」
つまり、商品にちょっとした変化を持たせるわけだ。例えば、レゴのブロックを販売する場合、男の子と女の子にそれぞれアピールできるようにカスタマイズする。かたや恐竜を作るパーツのセット、かたやユニコーンを作るパーツのセットという具合だ。
2. 検品にはコストを惜しまない
2つ目のポイントは検品だ。最初の仕入れの際は品質チェックを行うオプションがあると知らなかったが、パクは出品者たちが経験談を共有するフォーラムを読み、アリババでは追加料金を払えば注文した商品をロットごとに検品してくれるオプションがあることを知った。
検品にかかる価格は、どの程度徹底して検査するかによって異なるが、パクは最高品質のオプションを選ぶことを推奨している。最高品質のオプションは通常約150ドル(約1万9500円)で、その分各ロット内の検品数が増える。
「この検品サービスのいいところは、品質、機能、あるべき動作の確認、サンプルとの比較などの規格シートがあることです。
加えて、特定の項目をテストするように依頼することもできます。特定の機能を持つもので、それを具体的に調べてもらいたい場合はそれを追加することができます」
3. 自分なりの基準で商品を絞り込む
3つ目のポイントは、ソフトウェアで商品を絞り込むだけでは不十分だということだ。自分の基準でフィルターにかけることも必要だったのだ。
ソフトウェアでは、その商品がどれくらいの収益を挙げているか、競合他社のレビュー数はどれくらいか、推定利益率はどれくらいかしか表示されないという。しかし、その商品をカスタマイズして競合他社と差別化できるかどうかという点も出品者自身の基準に入れておくべきだとパクは言う。
さらに、特許や商標とアマゾンの制限について確認する必要もある。前者は、米国特許商標庁のウェブサイトで確認できる。このステップに自信がない場合は、弁護士に相談するか、Fiverrなどのサービスを利用してフリーランサーを雇うことをパクは勧めている。
なお、アマゾンが販売を制限している商品のリストについては、アマゾン出品者用のウェブサイトから探すことができるとパクは話す。
4. 利益を再投資して新商品を発売する
4つ目のポイントは、キャッシュフローを利用してビジネスを拡大することだ。特に最初のうちは、利益を再投資する必要がある。また、その利益を使って新しい商品を発売することも計画したい。
ある商品で獲得できる市場シェアは限られているため、新しい商品を追加することは重要だとパクは言う。新商品を投入し、複数の市場を開拓することが規模拡大の近道になる。また、ある商品の需要が伸び悩んだ場合にも、他の商品でカバーすることができる。
5. 同業者の経験から学ぶ
最後のポイントは、同業者の中に身を置くことだ。こうすることで失敗を経験した人たちから多くを学ぶことができる。また、他の出品者と組んでビジネスを拡大することもできる。商品の調達が得意な人なら、広告が得意な人と協力してもいいだろう。あるいは、時間の余裕がある人が資金に余裕がある人と組んでもいいかもしれない、と彼は話す。
「チームを組むのは良いアイデアです。お互いのスキルで補完し合えれば、その分早くビジネスを成長させることができます。また、それぞれが異なるリソースを持っているかもしれません」
パクは、パートナーと一緒に始めたアマゾン出品者アカウントを別に持っている。自分は中国から商品を調達するのが得意なのに対して、パートナーはアメリカ国内から商品を調達するのが得意だからだ。そのおかげで、メンズスポーツウェアの販売にも乗り出すことができたという。
※この記事は2023年2月8日初出です