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開業2年目初のG1挑戦が日本ダービーだった宮田敬介調教師 「馬にもプライド」心に刻んだ藤沢和師の言葉【競馬の話をしよう】

2021年6月19日 06時00分

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グレートマジシャンを撫でる宮田調教師

グレートマジシャンを撫でる宮田調教師

 競馬の世界を掘り下げる新企画「競馬の話をしよう。」。第2回は管理馬初のG1挑戦が、今年の日本ダービーだったという宮田敬介調教師(40)=美浦=を直撃した。まだ開業して2年目の若手調教師に、そのダービーで感じたことや、競走馬と向き合う仕事への思い、また調教師になったきっかけなどを聞いた。(聞き手・東佑介)

―初のG1出走がグレートマジシャンで挑んだ日本ダービー。結果は4着だったが感じたことは
 宮田師「初のG1がダービーというのは非常にありがたかったです。新馬から預かった最初の世代で、まさか出られるとは夢にも思っていなかったので、本当に感謝の思いでいっぱい。そういう馬を預けていただいたこと自体がすごいことかなと思います。ダービーも他のレースと一緒ですが、そう意識してもやっぱり緊張感は一緒じゃなかったですし、そこに向かうまで眠れない感じもありました。開業して2年目にそんな緊張感というか、それを体験できたのは今後に生きるんじゃないかと思います。毎年出てる厩舎もあるし、そういった先生方の仲間入りしていきたいですね」
 ―では、調教師を目指したきっかけは
 「父親が競馬好きで、社台グループのクラブ会員を30年以上前からやっていました。昔は映像配信がなくて、現地に行かないとレースが見られなかったので、持っている馬が出走する時などいろんな競馬場へ応援に行きました。小学校3年生くらいにオグリキャップのラストランだった有馬記念は子どもながら鳥肌が立つような感動を味わいました。その後もトウカイテイオーのジャパンCや有馬記念など、競馬を見て感動することが小さいころから多くて、自然とその世界に進みたいと思いました」
 ―開業して2年目だが、調教の方針などは
 「馬主さんや牧場さんから宮田厩舎に預けて良かったと思っていただける結果を出さなきゃいけないし、宮田厩舎でこの成績なら仕方ないというように感じていただける仕事をしないといけないと思ってます。馬のしつけや手入れ、例えば調教でも(ブラシで後肢に模様を描く)クオーターマークをつける、たてがみをきれいにするなど、少しでも自分の馬を良く見せるということに対してもプライドを持って仕事しようとスタッフには伝えています。結果を出すのはもちろんだけど、そういう馬と向き合う姿勢も意識して、より高みを目指していければいいと感じています」
 ―調教で大切にしていることは
 「藤沢(和雄)先生に『馬にもプライドはあるんだからな。忘れるなよ』と言われたのは非常に心にずしんときました。どうしても、どうやって仕上げてやろうかと人本意の“上から目線”で調教してしまう。もちろん、その姿勢も大事だけど、馬を自由にしてあげることも必要で、自尊心というか、馬のプライドを育てていくのも大切だと思ってます。いつも動く馬だけしっかりやって、負ける馬は毎回負けていれば、当然その馬は走るようになるとは思いません。3週後あたりまで考えてレースから逆算して、どう併せ馬を組めば馬のプライドを高めていけるかを意識して調教をしています」
 ―開業2年目で大変なことは
 「こうしたいという思いの中で、まだ馬房数や、現役馬が少ないなど、物事を組み立てようとした時にできない難しさを感じてます。ローカルだと他の厩舎に併せ馬をお願いするなど限られた環境で、より良い調教ができるように考えていますが苦しいですね。それでも1年目で16個勝たせていただき恵まれた成績でしたが、その勢いで今年も勝てるかと言えばそうではないです(現在5勝)。新馬も入れていかなきゃいけない、成績も上げなきゃと苦心してやってます」
 ―意識する調教師や、描いている調教師像は
 「関西の同期で開業した吉岡(辰弥、45)さんとはよく連絡を取り合って、競馬場で会ったらよく話してます。またよく勝つんですよね。やり方とか面白いことをしていて、お互い張り合ってやってます。『関西の吉岡、東の宮田』になれるよう頑張っていこうと。またやっぱり師匠が国枝先生なので、国枝厩舎にいた時のことがベースになってます。さらに研修でお世話になった藤沢先生や先人方のいいところをうまくミックスさせていければいいと思っています」

 ○…開業2年目の宮田師に、ここまでで印象に残っているレースを聞くと「いろいろあるけどダンシングプリンスでの初勝利です。でも勝ったら手放しで喜んで、少し浮ついた気分になると思ったら一切ならなかったのが印象的でした」。2着馬に10馬身差をつける圧勝劇とは裏腹の思いだったと振り返った。
 「強い勝ち方をすればするほど、次に向けてプレッシャーを感じるし、気が引き締まる。これをあと30年やるのかと思うと…。でも、勝って喜んでいる人の顔を見ることや、電話で連絡を取り合っている瞬間が一番幸せです」と、今後も最高の時間を味わうために馬づくりに励んでいく。
▼宮田敬介(みやた・けいすけ) 1980年10月8日生まれ、茨城県日立市出身の40歳。麻布大では馬術部に所属し、卒業後はノーザンファームに入社。2年半務めた後、2005年にJRA競馬学校厩務員課程入学。06年から美浦・栗田博憲厩舎、09年から同・田島俊明厩舎、14年から同・国枝栄厩舎で調教厩務員、調教助手などを経て、19年に調教師免許を取得し、20年3月に開業。初出走は20年3月7日、中山4Rのナバーラ(9着)。初勝利は20年4月5日、中山6Rのダンシングプリンス。18日現在でJRA通算21勝。趣味は始めたばかりのゴルフ。藤沢和、国枝の両大御所調教師からの指導も受け、まずは年内のスコア100切りが目標。

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