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浅田真央の「ビンタ」を上薗恋奈がそっくり採用 実は難しく高橋大輔がアドバイス <スケオタ道・第3回>

2024年9月2日 17時00分 (9月3日 15時26分更新)
 パリ五輪たけなわの8月上旬、内勤で忙しくしていた合間を縫って、京都府宇治市で行われた木下トロフィー争奪大会に足を運びました。そこで見た上薗恋奈選手(LYSインカラミ、愛知県北名古屋市出身)が挑むフリー「鐘」を見て、驚きました。2010年のバンクーバー五輪で浅田真央さんが演じたプログラム。そこで印象的だった頰を片方ずつたたく振り付けが、組み込まれていたから。
 ただ、最初に演技を見た6月のアイスショー「ドリーム・オン・アイス」にはなかったような…? なぜ、浅田さんの振り付けをそのままを取り入れたのか。どうしても知りたくて探りました。

浅田真央さんのフリー演技

気付いてしまった「あの振り付け」

 木下トロフィー争奪大会2日目のフリー。黒とグレーの衣装をまとった上薗選手がリンクイン。重厚な旋律がリンクに響いてから約24秒。手のひらで頰を片方ずつはたくような振り付けが見られました。
 「これは…!」。ピンときました。というか、私以外にも配信を見ていたファンの方は気付いたはずです。浅田さんがバンクーバー五輪で滑った「鐘」にあったあの振り付けとまったく一緒だということに。
 上薗選手の「鐘」を初めて見たのは6月でした。その時に見た限りでは、顔周りに手を添える動きをしており、浅田さんの振り付けをオマージュしているんだなという印象を持っていました。ですが、この大会では振りが「本家」のものに変更になっていてびっくりしました。
 「14歳で鐘に挑むことがすでに驚きなのに、さらに浅田真央さんの振り付けまで入れてくるとは。びっくりの2乗じゃん。どうして、あの振り付けを採用したんですか」
 どうしても聞きたくなり、振付師を兼ねる樋口美穂子コーチに話を伺いました。

「やっちゃえばいいのよ」

 「最初はね、真央の動きのようなそうでないような。中途半端な動きだったんだよね」と樋口コーチ。ですが、7月後半のジュニア強化合宿で上薗選手の演技を見たさまざまなコーチから「やるなら、しっかり真央ちゃんの振りをやっちゃえばいいのよ。アレが真央ちゃんなんだから」と助言をもらい、印象的な振りをそのまま取り入れたそう。

意外と難しい「ビンタ」

 「あのビンタみたいな動きって実は難しいんだよ」と樋口コーチ。氷の上でほおをはたく動きをやってみた上薗選手ですが、どうも最初はうまくできなかったそう。
 そこで、合宿に講師として参加していた元世界王者の高橋大輔さんがこんな助言をしました。「恋奈ちゃん、顔が先に動いているから駄目なんだよ。ビンタって手が顔に触れてから、顔が動くよね」
 「確かにそうだ」と納得した樋口コーチ。顔から先に動いていたら、それは「ビンタ」ではない。
 上薗選手も合宿で教えてもらったことを意識して、この大会では「強め」にビンタの動きをやったそう。「強くやらないと迫力がない。弱々しくなると曲にも合ってないので浅田真央さんみたいに強くできるように練習したい」と話していました。

今季、どんな「鐘」を鳴らすのか

鬼気迫る演技を披露する浅田真央さんのフリー演技

 上薗選手は浅田真央さんにあこがれてスケートを始めたといいます。その浅田さんは、重厚でおなかに響くような「鐘」の旋律に合わせ、自身の限界を超えていくという物語をバンクーバーの氷の上で描きました。
 14歳の上薗選手はどんな物語を描くのでしょうか。プログラムのテーマは希望。前半の「鐘」の部分では争いや戦いをイメージしながら踊り、曲が変わった後半では夢や希望を胸に歩き始める姿を表現していきます。「今までやったことのない表現」に挑む今季。上薗選手が歓喜の「鐘」を鳴らす、そんな名プログラムになることを期待しています。
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