『フィリップ・パレーノ:この場所、あの空』展が12月1日まで箱根・ポーラ美術館で開催されている。
フィリップ・パレーノは映像、音、彫刻、オブジェ、テキスト、ドローイングなどを用いて、現実 / フィクション / 仮想の境界や、実物と人工物との間に生じる乖離やずれなどを表現するフランスのアーティスト。ニューヨーク近代美術館やパリのポンピドゥー・センター、ロンドンのテート・モダンなどで個展を開催してきた。
今回の展示では、ドローイング、立体、映像、インスタレーションなどの作品群を国内最大規模で紹介。開催に先立って行なわれた内覧会の様子をレポートする。
展示室が大きな水槽に
展示会場に入ると、魚の形をしたバルーンが漂う空間にたどり着く。本展のために新たにデザインされた魚のバルーンを用いた『私の部屋は金魚鉢』だ。
同作では魚の瞳を作家の手によって一つずつ制作。美術館の展示室を水槽へと変換することで、人間との主従関係や重力、スケール、時の流れといった地上の法則から解放されているかのようだ。
『ふきだし(ブロンズ)』もバルーンを使った作品。
1997年から継続してさまざまな色で制作されているバルーン作品で、当初はある労働組合のデモのために制作され、風船の表面にデモ参加者のメッセージが書かれることを想定していたという。
光や映像を使った作品も多数展示
『幸せな結末』は展示ケースのガラスのなかのランプが不規則に点滅しており、そのたびにガラスが白く濁ったり、透明になったりを繰り返す。ランプの電源は隠されており、一見するとプラグは接続されていない不思議さも見どころとなっている。
このほか、映画『七年目の浮気』(1955年公開)のロケのためにマリリン・モンローが住んでいたニューヨークの高級ホテルを舞台に撮影した映像作品『マリリン』や、コウイカが主人公の映像作品『どの時も、2024』など、さまざまな表現手法の作品が展示されている。
「ものをつくることは目的ではない」
今回の展覧会は壁が非常に少なく、空間を生かした構成。これまでにも会場の特性を生かした展覧会を行なってきたパレーノは、会場であるポーラ美術館について以下のように語った。
「私のこの展覧会、そして場に対する想いはタイトルがそのまま表してくれていると思います。英語のタイトルは『Places and Spaces』で、場所と建物というプレースとスペースに対して、私がどういうふうに反応し、展覧会のなかに反映させていくかということだと思います」
「ものをつくることは目的ではなく、作品をどう展示して展覧会をつくるかということを自分の活動としてずっとやってきているので、ポーラ美術館という場所をすごくたくさん読み込んで、客人の1人として自分がどう介入していけるかを考えました」
- フィードバック 20
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-