【野球】死球をぶつけた投手は謝罪する必要があるのか NPBとMLBの違い 広島・黒原はDeNA・度会に頭下げる

DeNA・度会隆輝(左)に謝罪する広島・黒原拓未=横浜スタジアム(撮影・佐藤厚
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 3月30日のDeNA-広島戦の初回、広島の左腕、黒原がDeNA・度会の頭部付近に死球を与え、わずか3球で危険球退場となった。幸いドラフト1位ルーキーに異常はなく、三浦監督、チームメート、ファンを安堵させたが、死球後はイメージが残って特に内角球への踏み込みが甘くなることが多い中、2試合連続本塁打を含む4安打という離れ業を演じた。

 翌31日。DeNAの試合前練習中、菊地原投手コーチに伴われてグラウンドに現れた黒原は、三浦監督に謝罪の意を伝え、打撃ケージ裏でフリー打撃に備えていた度会の元にも赴き、頭を下げた。左腕は「また次(の登板)に向けて、僕もしっかり準備していこうと思います」と気持ちを切り替えていたが、死球をぶつけた投手が謝罪する必要はあるのだろうか。

 記憶に新しいところでは、昨年3月11日のWBC1次ラウンド・チェコ戦で、日本代表の佐々木朗が162キロ直球をエスカラの膝付近に死球をぶつけた。右腕は休養日の13日、自費購入したロッテのお菓子を大量に詰め込んだ袋を2つ持参し、改めて謝罪の意を伝えた。チェコ代表の宿舎を訪れた行動については「チェコの選手たちがすごいいい人たちで、いい人だから(謝罪に行きたくなったん)じゃないですか。そういう風に思ったからですかね」と心境を明かしている。

 MLBでは死球を与えた投手が帽子を取って謝意を伝えるシーンはほとんど見ない。関係者によれば「文化の違いですかね。メジャーでは仮に結果が死球だったとしても、それは全力でプレーした結果なんだと全員が受け止める。だから謝る必要はない。マウンド上で謝るようなしぐさを見せてしまうと、それは逆に故意にやった結果だと認めてしまうことになるんですよ」と語ってくれた。

 例外選手のひとりがドジャース・大谷だろう。エンゼルス時代、死球をぶつけた相手に対して、帽子のひさしに手を触れるしぐさを見せたり、翌日の試合前練習時に相手選手の元に向かってコミュニケーションを取るといった行動がたびたび見受けられた。謝罪を受けた相手は驚きつつも大谷の気持ちを汲み取るなど、右腕の行動は一定の理解を得ている。

 阪神OBの中田良弘氏は「昔は謝るなんてことはしなかった。俺も意図せずぶつけてしまったことがあったけど」と現役時代を振り返りながら、「今は代表戦で違うチームの選手と一緒になったり、オフの自主トレを共にしたりとか。昔も今も真剣勝負をしていることに変わりはないんだけど、時代の移り変わりもあるんだろうね」との私見を述べた。

 情報化が進み、SNS等での誹謗中傷にさらされる可能性があるからといって謝罪しているわけではない。故意でなくても、自らの手元が狂ったことで死球につながり、場合によっては選手生命を縮めてしまうような大ケガになるケースがある。選手同士の距離感が昭和の時代とは変わってきていることもあって、特に近年のプロ野球では帽子を取ったり、頭を下げるといった行動が多く表れていると考えられる。高校野球では、昔から死球時には投手が帽子を取る行為が続けられてきた。決して謝罪を「美」とするわけではないが、そんな「文化」が時代の変遷を経て、プロ野球界に広がってきた側面もあるのではないだろうか。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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