セガより2024年10月25日(金)に発売予定の『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』。同作は、2011年に発売されたオリジナル版に新要素を追加し、リマスター化した『ソニック ジェネレーションズ』と、シャドウを主人公とする完全新作『シャドウ ジェネレーションズ』の2本をセットにしたタイトルだ。
本記事では、2024年9月26日~29日にかけて開催されている東京ゲームショウ2024(26日、27日はビジネスデイ)の会場にて実施した、『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』開発スタッフへのインタビューをお届け。映画『ソニック×シャドウ TOKYO MISSION』をモチーフにしたダウンロードコンテンツや、シャドウの新たな力“ドゥームパワー”の見どころなどを、プロデューサーの中村俊氏、ディレクター鴫原克幸氏にうかがった。
中村 俊氏(なかむら しゅん)
『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』プロデューサー
鴫原克幸氏(しぎはら かつゆき)
『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』ディレクター
――先日のState of Playで、映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』と連動するDLCが発表されました。このDLCは、開発当初から制作することが決まっていたのでしょうか?
中村
いえ、初めから決まっていたわけではありませんでした。とはいえ、今回の『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』は、映画でシャドウが活躍することを見越して開発を決めたタイトルですので、「映画と連動するコンテンツを実現したい」という構想はありました。ただ、具体的にDLCの話が動き出したのは、ゲームと映画の制作が進んでからです。「やっぱり、映画と関連するコンテンツを作りたい!」と伝えたところ、映画サイドも乗り気になってくれまして。映画とゲームでは世界観がちょっと違うのですが、今回のDLCによって、映画で『ソニック』を知った方にゲームをプレイしていただく、もしくはゲームをプレイした方に映画を観ていただく、という流れが生み出せると思います。
――今年のソニックブランドのテーマは“Fearless: Year of Shadow”とのことで、さまざまなメディアでシャドウがフィーチャーされていますが、このテーマはどのように決めていったのでしょうか。
中村
先ほどお話しした通り、『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』は、映画の3作目を見越して決めたタイトルです。映画とゲームを連動させるのはなかなか難しいところもありましたが、映画とゲームを近いものにすることで、お客さんにとって、『ソニック』の展開をわかりやすいものにしたかったんですね。映画のシナリオが事前に共有されていたわけではありませんが、映画2作目の最後にシャドウが出てきますので、シャドウが活躍しないわけがないだろう……ということで、ゲームの方向性が決まりました。映画やゲーム以外の展開を決めるのは、その少し後でしたので、「それではブランド全体で、今年はシャドウをフィーチャーしていこう」ということになったんです。
――ひと昔前と比べると、ソニックブランド全体のまとまりを強く感じます。ゲームは毎年コンスタントにリリースされていますし、映画やイベントもあって。「絶え間なくコンテンツを提供して、ブランドの熱を持続しよう」という意識が伝わってきますが、そういう体制が整ってきたのはいつごろでしょうか。
中村
具体的にいつからというのは判断しづらいのですが、ソニックというIPが大きくなってきたことで、ゲームだけではなく、そのほかの商品についても、ほかの会社の方と組むことも含めて考えていかなければならない、と試行錯誤するようになりました。しっかりと、ソニックというIPとして計画的にテーマを定めて、毎年着実に展開していって、お客さんを増やしていこうと。
――皆さんがそのように考えるようになった起爆剤のひとつは、やはり映画の第1作『ソニック・ザ・ムービー』なのではないでしょうか?
中村
そうですね。映画の1作目が公開された後、ゲームの売上もやはり上がっていきました。海外出張に行くと、とくにそれを感じます。お店に行って、ゲームやおもちゃの棚を見ると、ほかの大きなIPと並んで、つねにソニックの商品が置いてある光景を見ることができるんですよね。日本国内のスタッフは、海外におけるソニックの人気を実感する機会がなかなかないので、海外出張がある際はできるだけスーパーやアパレル売り場などに連れていくようにしています。
――鴫原さんも、「棚に置かれる商品が増えた」と実感していますか?
鴫原
はい。ゲーム売場に行くと、目に入るところにソニックのゲームが置いてありますし、ぬいぐるみもたくさん種類があって。一大タイトルとして、しっかり認識されているということを感じます。
――そうしてソニックというIPがまとまりを持って展開することが、今回の映画のDLC制作にもつながったということだと思いますが、DLC開発はどのように進んでいったのですか?
中村
映画の具体的な内容を知っているスタッフは、セガの中でもかなり限られています。我々もほとんど知らなかったのですが、東京が舞台で、シャドウが出てくる……ということは伺ったので、それをもとに内容を考えていきました。
――このDLCにおけるシャドウの声は、映画でシャドウを演じるキアヌ・リーブスさんが担当しているんですよね。
中村
まだDLCの内容が固まっていないときに「DLC用のセリフを収録するので、台本を用意してほしい」と言われ、「どうしよう、どうしよう」と慌てたことを覚えています。その後、アメリカで収録されたデータが送られてきたのですが、飯塚(隆氏。セガ・オブ・アメリカを拠点に『ソニック』シリーズプロデューサーとして活動中)からは、「そのデータの声が誰のものかは聞かないでくれ」と言われました。
――中村さんに対してもキャスティングは伏せられていたんですね。
中村
はい。皆さんが映画の予告編を見てキャストを知ったのと同じタイミングで、我々も知りました。データの音声を聞いて、「もしかしたら……」と思ったりはしましたけど。映画の予告編を見て、ようやく答え合わせができました。
――DLCの紹介映像では渋谷の様子を見ることができますが、渋谷にロケハンに行ったりしたのですか?
鴫原
はい。ふだんからよく知っている場所ではありますが、「シャドウが走ったら、どういう風になるだろう」と考えながら現地を歩きました。
中村
なお、舞台となるのは“東京”ですので、渋谷以外の場所も出てくるかもしれません。
――たとえば大崎(※セガ本社は大崎にあります)とか!?
中村
大崎は……どうでしょう、出たらおもしろいですよね(笑)。
――では、DLCについては今後の情報を楽しみにするということで、ゲーム本編についてうかがいたいと思います。この夏から秋にかけて、世界各地で本作を試遊できる機会が設けられましたが、国内外からの反響はいかがでしょうか。
鴫原
シャドウはダークヒーローで、ソニックとはまた違う魅力があるキャラクターなのですが、その魅力がしっかり伝わっているなという感覚はあります。皆さんが「カッコいい」と言ってくださるのですが、そう思っていただけるよう狙って開発してきたので、うれしいですね。
中村
シャドウが主役のゲームは長年出ていませんでしたので、ファンの方が「シャドウを活躍させてほしい」とすごく強い思いを持っていることはわかっていました。開発のラインは何本もあるわけではないので、なかなかシャドウのゲームを作ることができませんでしたが、ようやく実現したんです。今回、“ドゥームパワー”の実装によって、シャドウに翼が生えたり、タコとかイカみたいになっちゃったりするんですけど、ファンの方がそれも歓迎してくれて。ソニックファンの方は、ファンアートを描かれる方がとても多いのですが、すでにいろいろなアートが誕生しています。「シャドウ、盛り上がっているな」というのを感じられますね。
ところで、翼と言えば、じつはこんな試みもしていまして……
(中村氏、TGSのセガ/アトラスブースで『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』の予約証明を提示するともらえる、レッドブル限定リバーシブルBOXを取り出す)
――あっ、翼授かってる!!!
中村
“翼をさずける”というとレッドブルさんを思い出す方も多いと思いますが、今回、こういったチャレンジをレッドブルさんと協力して実現することができました。この箱はリバーシブル使用になっていて、メインビジュアルが描かれているほうも推しなのですが、こちらの絵のほうも推しています。
――それにしても、やはり、シャドウの“ダークヒーロー”という在りかたはカッコいいですよね。このメインビジュアルもシリアス寄りで、カッコよさを引き立てていると思います。
中村
このビジュアルは、キャラクターの顔は見えていませんが、「作品全体の雰囲気を感じてもらって、興味を持っていただきたい」と思って作ったものです。キャラクターを押し出すだけでは、多くの人に興味を持っていただきづらい時代になっているので。いざ遊んでいただければ、ゲームプレイを通じて、ダークヒーローであるシャドウの魅力はぜったいに伝わりますから。
――先ほどドゥームパワーのお話がありましたが、ドゥームパワーの種類はどれほどあるのでしょうか?
中村
複数のターゲットにカオススピアを放つ“ドゥームスピア”、水上を移動する“ドゥームサーフ”、敵を連続攻撃して吹き飛ばし、吹き飛ばした位置にワープする“ドゥームブラスト”などがあります。じつはドゥームブラストを利用すると、ものすごいショートカットができるコースもあるんです。すべてのコースで、ドゥームパワーを利用した仕掛けを用意していますので、ルート探索を楽しんでもらえればと。
ほかには、先ほどお話しした、翼が生える“ドゥームウィング”や、特殊な地形を進める“ドゥームモーフ”があります。8月に“ドゥームパワー トレーラー”という映像を公開していて、そこで詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
中村
「ドゥームパワーを使うと、こんなところに行けるんだ!」と探索していく要素が、本作の深みになっています。「あれ、こんなところにリングが置いてあるということは……?」、「ここはどうやって行けるんだ?」と、いろいろ考えてみてください。能力の使いかたを学んでいくことで、遊びかたがどんどん広がっていくというところを、本作ではがんばって作り込んでいますので。
鴫原
ドゥームパワーを使わなくても、クリアーはできます。映画やアニメをきっかけにソニックやシャドウのことを知ったというような、ゲーム経験が少ない方でもプレイしやすいように作っています。一方で、タイムを極める遊びかたをするユーザーさんは、ドゥームパワーとカオスコントロールを使えばより速いタイムを出せますから、ぜひチャレンジしてみてください。カオスコントロールを使うと、ゲーム中のタイムも止まりますし。
――カオスコントロール使用中は時空が歪んで時間が止まりますが、シャドウだけは動けてコースの先に行けるので、結果的にタイムが縮まる……ということですね。
鴫原
ですので、タイムを極めていく場合は、どこでカオスコントロールを使うかを考えつつ、自分のルート、自分のプレイスタイルを作っていくことになると思います。
中村
開発スタッフも「タイムを更新した!」とがんばっていますが、ソニックというのは、ユーザーさんが開発スタッフのタイムをはるかに凌駕する記録を打ち出してくるものなので……。
鴫原
「あっ、こんなルートがあったんだ」と開発も気づいていなかったルートが見つかったりするので、発売後はそれも楽しみにしています。
――続いて、ストーリーに関してうかがいます。先日ストーリートレーラーが公開され、メフィレスやマリアの姿にファンが沸いていました。
中村
基本的には、シャドウと因縁のあるブラックドゥーム、マリアとの関わりが描かれていきます。今回の新要素であるドゥームパワーは、ブラックドゥームがシャドウに分け与えたもので、それにはもちろん意図があるわけですが、そこにシャドウがどう近づいていくのか。そういったところを楽しみにしていただければと。メフィレスはシナリオに大きく関わってくるというよりは、 ゲスト……というと語弊があるかもしれませんが、“ジェネレーションズ”だからこそ登場させられたキャラクターですね。
――メフィレスは濃いファンがいるキャラクターかと思うのですが、その人気は皆さんも認識されていた?
中村
長く続いているシリーズゆえに、プレイヤーの方がどの作品から始めたかによって、思い入れのあるキャラクターやボス、ゲームスタイルが違うんですよね。それが嬉しくもあり、悩ましいところでもあるのですが、今回は“ジェネレーションズ”ということで、昔のキャラクターとの交わりを描けました。今後も、過去の物語と関わるタイトルであれば、懐かしいキャラクターを描くこともあり得るかと思います。
――過去と言えば、シャドウのルーツを描くアニメ“闇の序章 シャドウとマリア”が、先日YouTubeにて公開されました。
中村
アニメ“闇の序章”は『シャドウ ジェネレーションズ』の物語につながる話で、シャドウのシリアスなバックボーンを知っていただける内容になっています。アニメは3本用意していますので、それらを見ていただいてうえでプレイしていただくと、シャドウへの思い入れを高めた状態で楽しんでいただけます。
鴫原
また、ゲームの中にも、シャドウのことをまったく知らない人が見ても、シャドウのことがわかるような映像を収録しています。『ソニック』を遊ぶのは初めてという方にも、プレイに入り込んでいただきやすいものにしています。
中村
『ソニック ジェネレーションズ』は、ソニックの歴史をたどれるような内容で、資料や楽曲もたくさん収録しています。『シャドウ ジェネレーションズ』も同様の作りにしていますので、シャドウファンの方には喜んでいただけますし、シャドウを知らない方には、これをきっかけに興味を持っていただいて、シャドウのことを深堀りしてファンになっていただければと思います。
――『ソニック ジェネレーションズ』についても、見どころを教えていただけますか?
鴫原
13年前に発売されたオリジナル版をリマスターしたものですが、ただ移植したというわけではなく、“チャオレスキュー”という、各地に散らばっているチャオを集めていく要素を追加しています。これによって、オリジナル版では気づかなかった場所に行くというような、新しい気づきがあると思います。
それともうひとつ、地面に着地した瞬間にダッシュができる“ドロップダッシュ”という能力を追加しました。昨今の作品では標準の機能ですが、オリジナル版には実装されていませんでしたので、これを使って新しい攻略を楽しんでいただきたいと思っています。
――ステージの内容自体は、オリジナル版から変更はないのですか?
鴫原
はい。当時、私はレベルデザインを担当していましたので、改めて見ると「ここを変えたい……」という場所はあるのですが、今回はオリジナル版での感動をそのまま体験していただきたく、その気持ちはぐっとこらえました。
グラフィックに関しては、ライティングや色味を調整しています。4kで映してもきれいに見えますよ。
――2作品収録している本作ですが、プレイボリュームはどのくらいでしょうか。
中村
遊びかた次第で変わってはくるのですが、『シャドウ ジェネレーションズ』のプレイボリュームは、『ソニック ジェネレーションズ』と同じくらいか、ちょっと少ないくらいかと思います。両方遊ぶと、長時間楽しんでいただけるかと。昔は『ソニック ジェネレーションズ』のみで発売していたわけですから、かなりオトクです。
――それぞれ単品で発売してもいいのに、セットですからね。『シャドウ ジェネレーションズ』のみで展開することは考えなかったのですか?
中村
映画を見た方はシャドウを好きになってプレイしてくださると思いますが、映画を見ていない方にももちろん楽しんでいただきたいので。『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』を、「これをプレイすれば、とりあえずソニックのことはわかる」という定番タイトルにしたくて、プレイヤーの皆さんからの評価も高い『ソニック ジェネレーションズ』も加えました。今後、シャドウの人気がもっと確立されていけば、さらなるシャドウのゲームが出てくるかもしれません。
――シャドウはすでに人気がしっかりあるキャラクターかとも思いますが……今回の東京ゲームショウでは、シャドウがどーんと目立っていますね。
中村
2年前に『ソニックフロンティア』を出展したときは、ソニックの大きなバルーンを展示していました。それで、今回は新たにシャドウのバルーンを用意して、ふたつ並べてクロスさせたいなんてことを考えたんですけど、バルーンを複数置くとそのぶん試遊台の数が減ってしまうので、それは本末転倒だろうと。ということで、今回はシャドウがメインになっています。
ソニックの試遊台の台数は、10年くらい前はいまよりも少なかったのですが、いまは多くの台数を用意できて、会社としても力を入れて展開しています。我々開発としては、会社の期待、ユーザーの皆さんにきちんと応えて、みんなが喜ぶ状況にしていきたいと思います。
――この秋から冬にかけて、ゲームと映画によってソニックとシャドウが盛り上がることに期待しています。DLCがふたつの架け橋になりますしね。
中村
デジタルデラックスエディションを購入していただくと、先ほどお話しした東京が舞台になるDLCも付属します。また、このデジタルデラックスエディションには、テリオス(シャドウの開発初期デザイン)の姿で遊べるスキンもついてくるのですが、これはけっこうがんばって作っているものなので、ぜひ楽しんでいただきたいです。ほかに、アートブックやサウンドトラックなどもついてきます。
それと、パッケージ版、デジタル版を予約すると“モダンソニック レガシースキン”が特典としてついてきます。これは『ソニックアドベンチャー』のモデルで遊べるというもので、あえてレトロな見た目にできます。意外とおもしろいので、これも楽しんでいただければと思います。