ラスベガスで開催された格闘ゲームイベント「Evo 2017」の『ストリートファイターV』部門で、見事チャンピオンに輝いた、日本のときど選手。最有力だった米国Punk選手に反撃の機会すらあたえず、圧倒的な攻めで勝利を収めました。編集部は、海外メディアと合同で、短時間ながら ときど選手にインタビューする機会を得られたので、その内容をお届けします。なお、インタビュー中、ときど選手はほとんどの質問に対して自ら英語で回答しています。
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――ときど選手が、長年、競技シーンで高いレベルを維持し続けられるのはなぜでしょうか?
ときど選手: 最近、(競技シーンの)レベルはどんどん高くなってきています。以前は、大会でトップ8まで行くのは難しくありませんでしたが、今はe-Sportsシーンがものすごく大きくなって、誰もがトッププレイヤーを目指しています。でも、格闘ゲームは自分にとって特別な存在で、少年時代からずっとプレイしてきました。なんでしょうね……(長い沈黙)。難しいですね。もちろん、練習はたくさんしていて、最近になって新しい方法で練習をしています。単に技術面、戦術面だけでなく、メンタル面も強くなりたいです。大会では、ナーバスになってプレイするのではなく、カジュアルにプレイする方法を考えました。大会は長時間に及ぶので、疲れないようにしなければならないです。ただプレイするだけではなく、身につけるべきことは本当にたくさんあります。とにかく、新しいやり方をいろいろ試してきたので、トップにいられるのだと思います。
――「Evo 2017」の優勝インタビューで、対戦相手をコントロールする方法を学んでいると話していましたね。実際にPunk選手との決勝戦では、リセットする前、あなたはPunk選手に1ラウンド勝たせて、リセット後にも1ラウンド勝たせています。あれは、Punk選手があなたに対してどのように戦うのか、情報収集するためのコントロールや調整の一部だったのでしょうか?
ときど選手: はい。カジュアルな対戦はたくさんしていて、お互い相手が何をしてくるかは分かっていました。Punk選手も僕の戦術は知っていたかもしれません。豪鬼とかりんの対戦は大抵いい勝負になります。僕が勝つときもあれば、彼が勝つときもある。でも、対戦中、彼がナーバスになっているように感じました。決勝戦まで、Punk選手は全勝していて、こんな大きなトーナメントで、ほとんどピンチを経験していませんでした。そのせいか、彼のプレイイングは防御的になり、ミスを犯しました。私もそんな経験をたくさんしてきたので分かりました。その後は、簡単にPunk選手をコントロールできたのです。
――『ストリートファイターV』のシーズン1では豪鬼がまだ存在しませんでした。シーズン2が始まって、あなたは自分を象徴するような豪鬼を使ってEvoで優勝を果たしました。過去のバージョンとくらべて、キャラクターについてどう感じますか?
ときど選手: 豪鬼の追加が発表される前から、リュウをやめて豪鬼を絶対に使うと宣言していました。Tier Listは関係ないです。予告した通り、シーズン2で豪鬼が最初に追加されて、すぐにスイッチしました。でも、リュウが強かったシーズン1とくらべて、最初はものすごく大変でした。当時のリュウは今の豪鬼より強かった。とにかく、カプコンに「ありがとう!」と言いたいです。豪鬼は僕にとって間違いなく最高のキャラです。普通の人には、いぶきやバイソンがベストかもしれません。でも、Tier Listはキャラクターのポテンシャルだけでなく、使いやすさも基にしている気がします。豪鬼は扱うのがとても難しいキャラクターですが、ポテンシャルは高いです。それが自分にとってベストである理由です。それが証明できて、ものすごくうれしいです。
――あなたの所属するEcho Foxは、複数の競技タイトルにまたがって選手が所属する有名チームです。『ストリートファイターV』だけでも、ももち、Justin Wong、Julio Fuentesといった選手がいます。あなたの過去のキャリアとくらべても、今が最高の時期ではないでしょうか
ときど選手: そうですね、ちょうどEvo 2017の一週間前に、「FOXCON」というイベントがありました。僕はサンノゼでJustin選手と滞在していて、そこには上手いプレイヤーがたくさん来ていたんです。Punk選手もJustinの家にいましたよ。彼らと素晴らしい練習ができたのはチームのおかげです。
――フリーエージェントだった頃とくらべて、チームにはどれくらい貢献できたと思いますか?
ときど選手: Echo FoxのためにEvo 2017で優勝できて本当にうれしいです。格闘ゲームにおいて、勝利することは最重要ですが、僕はそれ以外の何かも見せることができたと思います。勝利して、さらに格闘ゲームで見せたかったものも見せられらた。これが大きな貢献になっていると願います。
――日本では、一部をのぞく対戦格闘ゲームが、おじさん臭いものに見られる傾向もあると感じているのですが、どうしたら若い世代にその魅力をわかってもらえるようになると思いますか?
ときど選手: それをちゃんと喋ったら、1時間くらいかかってしまいます(笑)。手短に言うと、若いプレイヤーが格闘ゲームを初める理由は、こんな大きなトーナメントが開かれてます、とか、これだけ賞金が出ます、とか、好きなゲームをやってプロになれる、といったことがきっかけだと思います。でも、それはどちらか言うと僕の役割ではなくて、イベント主催者だったり、メーカーさんの仕事ではないかと思います。僕の役割は、格闘ゲームを始めて勝ち上がってきた若いプレイヤーたちの反応速度に対して、オールドスクールプレイヤーが“経験”で打ち倒して、「格闘ゲームってお金とかもすごい動いているけど、奥が深い、素晴らしいものなんだ」と分かってもらうことです。「こんなに色々経験しないとダメなんだ」と分からせることで、もっともっと強くなって、人間としても成長して、自分がチャンピオンになってNo.1になるんだ、と思わせるのが、僕らの役割だと考えています。
なぜなら、勝利から学ぶのはとても困難です。でも、負けてしまった時は、勝つためにどうしたらいいかを悩んで、もがいて、考え続けます。それが最高の経験になるんです。これは格闘ゲームに限った話ではなく、社会全体にとって重要なことですね。
――ときど選手、ありがとうございました。