【 君がいる場所 】#73. ひとりぼっち*。

君がいる場所

#73.

鎌倉に着いた、
そして鎌倉の駅から歩いてレトロなお店が多いことに驚きと感動があった。

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父方の祖父母、佐藤家は鎌倉の駅から歩き20分のところにある。
きっとバスを使うことも出来るんだろうけど、
前回も今回も私は歩きを選んだ。
ーーー前回は気が付かなかった情景を楽しみ、
携帯でずっと写真を撮りながら祖父母の家に向かっていた。

結果ーーー・・・。
ダメだった。
受け入れたい気持ちはあるけど、
今はその余裕がないと断られた。
以前私を引き取りたいと言ってくれた直後、
もう1人の息子さん・・・
お父さんの弟家族が戻ってきて同居を始めた。
遅めの出産で、
今その孫の面倒を見るので手一杯だと断られてしまった。
タイミングって合わないんだなって思った。
ーーーお互いに望んだ時期が合わず、
こう言った結果をもたらしてしまった。

数時間で祖父母の家を退散して、
私は鎌倉の街を堪能するーーー。
都内に住む私は滅多に鎌倉に来ない、
こんな素敵なところだったなんて知らなかった。
時間もたっぷりあったから、
1人でカフェに入ったり、
小腹が減って新鮮な白子を食べてから東京に戻った。

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東京に戻ったところで私には戻るところがない。
ーーー剛くんのところに戻ればきっとお姉ちゃんは不服でも承諾するかもしれない。
先輩のところに戻ってもきっと受け入れてはくれるだろう。
でも結局・・・私はその人それぞれの人生の邪魔をしているだけに違いないから甘えるわけにはいかなかった。
そう考えると残るは静岡の祖母の家を頼りにするしかないけど、
2度と静岡には来ないでとおばさんに言われている手前・・・
私はどうしても頼りたくなかった。
だから私は・・・
格安で高校生でも受け入れてもらえるカプセルホテルに泊まった。

バイトを増やし朝から働き、
昼も夜も夜中まで働いたーーー。
日払いのバイトも増やし、
カプセルホテルの宿泊代に当て、
ほとんど食事は取らなかった。
ーーー自分でも分かってた、
痩せ細ってしまっていることくらい。
時々先輩からメールや電話を受けた・・・ーーー。
でも本当のことは言えなかった、
こんな生活をしているなんて恥ずかしくて言えなかった。
ーーー先輩とはかけ離れた生活レベル、
もう剛くんに甘えていた時の私はいない。
「ーーー今バイトが毎日忙しくてしばらく会えないと思います。」
先輩は私が鎌倉で・・・
佐藤の祖父母の家にいると思ってる。
「・・・そんな感じだな。減らせば?」
そんな簡単に言わないで、
才能ある先輩とは違うんだからーーー。
「・・・私は先輩とは違う。」
「・・・違うって、何が?」
「先輩は才能あって生活が保障されてる、でも私は何もない。だから必死でバイトしていくしかないんですーーー。みんなに甘えてばかりいられないんです。」
「・・・何それ(笑)妬んでんのか?」
「住む世界が違うって言ってるんです。」
「分かったよ、勝手に泣き言言ってれば良いよ。」
ーーーその言葉を聞いて私は目を瞑り、大きな深呼吸をして電話を切る。
通話の途中で切って最低だけど、
もう良いやって・・・
考える力さえ残ってなくて、
そのまま先輩と疎遠になった。

そんな日々が続き、
気が付けば年も明け、
登校日の日になってた・・・ーーー。
制服を身にまとい気がつく。
ぴったりだった服がこんなにもブカブカに、
そして自分の顔が人に会えないと思うくらい痩せ細ってしまっていたことに。
ーーー行けない、
こんなんじゃ友達に会えない、
そう思ってすぐに制服を脱いだ。

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私服に着替えて午後からのバイト先に入れてもらう。
バイトといっても私は健全なバイトしかしてない。
カフェと本屋のバイトを掛け持ちして朝から夜中まで働いている。
簡単に稼げる道はいくらでもあると思う、
でも私はそこまでして稼ぎたいとは思えなかった。
ーーー違う、そっちの世界に踏み出す勇気がなかったんだと思う。

でも・・・
もう疲れちゃった・・・
朝から夜中まで毎日睡眠不足で、
こんなに働いて私は何を得るんだろう。
減るものばかりで私は何を得ていると言うのだろう。
ランチで食べたテラスの席から空を眺めた。
ーーーでも前まで笑いかけてくれていた両親の姿が見えない。
語りかけてくれていたように見えた両親の姿が、
まるで幻覚だったかのように何も見えなくて、
私は必死に手を伸ばした。
勇気をもらいたくて、
生きる道標をもらいたくて・・・。

でもそれはきっと独りよがりだった。
ーーーどんなに手を伸ばしても、
もう両親は笑いかけてくれなかった。

その時、ドーン!と言う大きな音とキャーという悲鳴と共に私がいるビルに大きな煙が湧き上がった。
「逃げて!」というスタッフの声でどうやら火事かなんかが起きてしまったんだと・・・
私は近くにいた子連れのお母さんを見つけ、
1人のお子さんを一緒に連れて階段を降りた。
男の子が煙を吸わないように抱き抱えて、
私なりに守った。
だけどーーー火の回りは早くて・・・
私は男の子を他の人に託して、
自分はゆっくり進んだーーー。
足が動かなくてこういう時不便だと感じた。
ーーーもう煙が充満してる、
無理だと思った瞬間に私の意識は途切れた。

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