パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。
東芝の中にとどまるよりも外に売られた事業のほうが好調ではないか。小生がそういう視線を持ったのは、小生が大学院で同級生だった友人が経営する東芝の子会社が売却された際に、友人がことのほか喜んだことがきっかけだ。
彼の理由は、経営の自由度が格段に増し、いちいち日本の(世界をよく知らない)親会社の経営陣の了解を得なくとも思い切った投資ができることで、成長機会を確実に捉えることができるということだった。
スイス証券取引所に上場していたこのスマートメーター会社、Landis-Gyr(ランディス・ギア)社の株式を東芝が2017年に売却した事情は、過去の記事『東芝はどこに向かおうとしているのか』に詳しいが、その後同社は世界市場での成長を続け(友人はその間にCEOを退任し会長になっている)、今やスマートメーター市場での地位を盤石のものにしている。
振り返ってみると、近年の東芝に売却された事業の主なものを挙げてみると、片っ端から「好調に推移」または「見事に復活」していることに気づく。
Landis-Gyrに先立つ2016年に売却された有望事業の筆頭は医療機器事業だった。東芝の虎の子とも云われた同事業(旧・東芝メディカルシステムズ)は、富士フイルムやコニカミノルタなどとの綱引きを経て、6655億円の金額と引き換えにキヤノン傘下に入った。その事業の責任者は、「東芝での事業上の相乗効果はほとんどなかった」と後日語っている。
売却後の業績は相変わらず好調で、売却時に2799億円だった売上高はその後着実に拡大、今や3200億円を超える。
同じ2016年に中国家電大手の美的集団に売却された東芝ライフスタイル(本社:川崎市)は、2018年度に黒字転換してから2019年度、2020年度、そして2021年度と4期連続で黒字を達成。しかも増収増益基調を維持している。
売却前の東芝の白物家電事業といえば、慢性的な赤字基調のせいで「お荷物」扱いされていたのが、まったく様変わりなのだ。「すべてを変えなさい」を旗印にする親会社の美的集団との「共同による製品開発スタイル」が定着、洗練されてきて、開発スピードが上がるなどの効果を発揮しているとのことだ。
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