Microsoftが「AWS超え」に本気 ナデラCEOが語る「2つの注力項目」CIO Dive

Microsoftは、AIとクラウドの需要拡大に対応するため巨額の設備投資を進めている。CrowdStrikeによるシステム障害の影響を受けてナデラ氏が語った「2つの注力項目」とは。

» 2024年09月19日 11時20分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CIO Dive

 クラウド事業の覇者であるAWS(Amazon Web Services)との競争を優位に進めるために、Microsoftが巨額投資を進めている。

ナデラCEOが語る「2つの注力項目」とは?

 Microsoftは、クラウドとAIのワークロード需要に対応するため、データセンターの容量増強を主な目的とした設備投資に190億ドルを投じた。同社のエイミー・フッド氏(エグゼクティブバイスプレジデント兼CFO《最高財務責任者》)が、2024年7月30日に開催された同社の第4四半期の決算発表で明らかにした(注1)。

 この巨額投資の背景には、Microsoftのキャパシティを超える需要をもたらしたAIサービスの高成長がある。一方で、Microsoftに対してはセキュリティ面に対する不安要素も指摘されている。これらを踏まえてナデラCEOが注力すると語った2つの項目とは。

 「クラウドとAI関連の支出は、設備投資額のほぼ全てを占めている」とフッド氏は述べた。投資のおよそ半分がデータセンターの建設とリースに使われ、残りは需要に合わせて顧客にサービスを提供するためのCPUとGPUハードウェアに費やされたという。

 2024年6月30日までの3カ月間で、Microsoftのクラウド部門における売上高は前年同期比21%増の360億ドルを突破した。同社の売上高全体は640億ドル強で、クラウドが全体の半分以上を占める。

 Microsoftのクラウド事業は、OpenAIに対する出資により競争に先駆ける前から着実に成長していた(注2)。それ以来、同社はさらに勢いを増している。

 同社は2024年1〜3月の間に、8000億ドルの市場規模を持つ世界全体のクラウドサービス市場において、4分の1のシェアを獲得した(注3)(注4)。「Microsoft Azure」部門の売上高は、AIの導入が功を奏して前年同期比で29%増加した。

 「Microsoft Azureの成長率には、当社のキャパシティを上回る需要をもたらしたAIサービスの伸びによる8ポイントが含まれている」とフッド氏は2024年7月30日に述べた。データセンターへの投資によってMicrosoft AzureのAIの計算能力を拡大することで、「下半期はさらに成長する」と同社は見込む。

 Microsoftにとって数十億ドル規模のインフラ構築は、クラウド業界の覇者であるAWSや後発のGoogleとの覇権争いを優位に進めるための戦略の一環だ(注5)。Amazonのクラウド部門は2023年、世界市場の約3分の1を占めており、11%のシェアを占めるGoogleは2024年1〜3月に130億ドルをインフラに費やした(注6)。

 AIに最適化されたチップへの移行により、ハイパースケーラーはインフラ投資を含めて戦略を再構築せざるを得なくなっている。

 Microsoftのサティア・ナデラCEOは決算説明会で、「現在起きている移行には、知識と資本集約的な投資が必要だ。これらは今後10年、あるいはそれ以降の成長を促進する、世界全体にとって長期的な資産になるだろう」と話した。

 ナデラ氏によると、同社が提供する「Azure AIサービス」の顧客数は6万を超え、前年比で約60%増加している。有償の「Models as a Service」の顧客数は前四半期比で2倍以上に増加したという。

 Microsoftは急速な需要拡大によってキャパシティが大幅に不足し、データセンターの一部の需要をアウトソーシングした(注7)。

 「AI処理能力のリースが一部遅れているため、サードパーティと契約した。協力してくれるパートナーとともにMicrosoft Azureを拡張し、Azure AIサービスの需要に対応できるようにした」(フッド氏)

 2024年7月に発生したCrowdStrikeの障害によって世界中で数百万台の「Windows」デバイスがダウンし、同年7月30日にはMicrosoft Azureに対するDDoS(分散型サービス拒否)攻撃が発生した(注8)(注9)。

 ナデラ氏は2024年7月29日、同社がセキュリティに注力していることを強調した。

 「われわれは基本的な2点に集中している。インフラにまたがる製品ポートフォリオ全体でイノベーションを推進すること、そして、クラウドビジネスを拡大し続けてセキュリティを基盤とした優先事項を強化することだ」

© Industry Dive. All rights reserved.

  鄙サ隸托シ