「むちゃくちゃキレイですよ。あんなの見たことない」「わー、きれい」──。FPD関連の展示会「FPD International」のあるブースでは、来場者が口々にそんな感想を漏らしている。2.4インチの携帯向け有機ELディスプレイを大々的に展示したパイオニアブースだ。
携帯電話型のパネルにはめ込まれて展示されているのは、2.4インチのアクティブ型フルカラー有機ELディスプレイだ。解像度はQVGAで26万色表示。既に量産レベルに達しており、2005年には搭載機器が市場に出てくるという。
自発光が特徴の有機ELは、液晶に比べて(1)コントラスト比が高い(2)視野角が広い(3)応答速度が速い(4)薄型化が可能(5)低消費電力という数々のメリットを持つ。ただし実用化に当たっては、製造の難しさと寿命の短さという課題があった。
液晶を駆動するだけのTFTと違い、アクティブ有機ELパネルのTFTは駆動電圧が各画素の明るさに直結するため、輝度むらが起こりやすい。また有機材料は電流量に応じて劣化するため、明るく光らせるほど劣化が早くなる。
同社のパネルでは、RGBの全色材料を発光させる“全白”状態で、「100カンデラで1万時間、150カンデラで5〜6000時間」(説明員)を達成。実際の利用では画面の一部のみが発光するため、点灯率は約半分になり、実用上は問題ないレベルに達したという。
ちなみに同社では消費電力と寿命、見た目のバランス的に150カンデラを推奨している。
もう1つの課題であるコストは、未だ「液晶と同等以上」。原理的には低コストが期待できる有機ELだが、歩留まりなどの問題から、現状コストでは勝っていない。
美しさで来場者を魅了する有機ELだが、製品化が遅れる中で液晶に追いつかれつつあるスペックも出てきた。有機ELは500対1という高コントラストをうたうが、例えばシャープの「モバイルASV液晶」も300対1のコントラスト比を達成(従来のシャープ製液晶のコントラスト比は150対1)。視野角も、液晶テレビ向け技術を応用することで、携帯向け液晶でも急速に高視野角化が進んでいる。
ただし、有機ELにはまだ奥の手が残っている。有機材料からの光を、駆動回路側からではなく反対側から取り出すことで開口率を上げる、トップエミッション方式の採用だ。パイオニアや三洋電機などはボトムエミッションが主流。パイオニアは、トップエミッション方式の研究も進めており、有機ELの最終形はトップエミッションだと見る。現在は、「ボトムエミッションで、まずは製品化を急ぐ」(説明員)状況だ。
ソニーはトップエミッション方式の3.8インチ有機ELパネルを量産し、同社製PDA「CLIE」に搭載した。ただし同製品の価格は9万円を超える。
携帯の機能を差別化していく中で、依然として“ディスプレイの美しさ”は重要な要素。2.4インチQVGA液晶で一段落した携帯ディスプレイだが、有機ELの美しさが次のブレイクスルーとなる可能性もある。
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