全世界のメール総トラフィックのうち8割を占めるともいわれている“迷惑メール”。芸能人を騙るなど、あまりにも突飛な内容がネタとして話題になるものもあるが、なかには有名企業のメールと似たドメインが使われるなど、迷惑メールと気付かず返信してしまいそうになるケースも…。そんな最近の迷惑メールの傾向はどうなっているのだろうか? 『迷惑メールは誰が出す?』(新潮新書)の著者で、中央大学総合政策学部准教授の岡嶋裕史氏に話を聞いた。
「これまでは、クリック詐欺に誘導するメールや架空請求メールが無差別に送られてくることが多かったのですが、最近は“標的型攻撃”といって、ターゲットを特定して送るメールも増えてきています。不特定多数に送られるものでは、Facebookなどのサービスや銀行を装ったメールも。いずれも一見して迷惑メールと分からないものが増えているので注意が必要です」
スマートフォンの普及で、LINEでの迷惑メッセージも増加傾向にあるという。メールを開いただけで被害にあうようなケースは少ないので、いかに次のアクションを起こさないかが大切となるそうだ。
「迷惑メールを送る側の目的は、メール経由で悪さをするウィルスを送ったり、不正なサイトに誘導したりすること。知らないアドレスからのメールにファイルが添付されていたり、URLが記載されていたりする場合は、迷惑メールの可能性があるので、送り主がはっきりしない限り開かないのが基本。送り主が明確でも、送信者自身がウィルスに感染している恐れがあるので、添付ファイルはセキュリティソフトによる検査を必ず行ってから開きましょう」
そうはいっても、万が一記載されているURLをクリックしてしまった場合はどうなるのだろうか?
「以前からある手口では、URLをクリックすると、IPアドレスなどと一緒に身に覚えのない請求金額が表示される、というものが有名です。こうして振り込みを要求してくる詐欺は、完全に無視するのが得策。焦ってメールに返信してしまうと、それにより“リアクションがあったユーザーリスト”に載り、より大量の迷惑メールが送られるようになるケースも。その場合にはメールアドレス変更も余儀なくされてしまうので、とにかく焦らず対処することが大切です」
万一お金を振り込んでしまった場合、警察に相談したとしても、お金が戻ってくることはほとんどない。迷惑メール業者が摘発を避けて、事業者名や差出人をコロコロ変えるため、会社の特定が難しいからだ。
もうひとつ近年の傾向として、メールに記載されたURL経由で、アンケートやID確認のページなどに誘導し、個人情報を聞き出すフィッシング詐欺も増えているそう。性別や年齢、家族構成、趣味・嗜好といった個人情報が、裏でお金と交換されているという。
「例えば、銀行を騙る迷惑メールで、その銀行のwebサイトそっくりに作られたページに誘導して暗証番号を入力させるケースが流行しました。暗証番号までいくと警戒する人も増えるでしょうが、アンケートくらいなら答えてしまう人も多いようです。メール経由で個人情報の入力を求められたときは、本当に自分が使っているサービスかどうか、なりすましではないか充分に注意しましょう」
内容や詐欺の方法など、多様化している迷惑メール。受け取った側は、冷静さと用心深さをもって対処するしかなさそうだ。(おきざきみあ/HEW)
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