既報の通り楽天は6月14日、「楽天モバイル」の主力プランである「スーパーホーダイ」のサービス内容をリニューアルした。「2年・3年契約時の優待方法の変更(キャッシュバック→月額料金割引)」「より大容量なプランの提供」「国内通話準定額の時間制限の緩和」がその内容だ。
一方、楽天は子会社「楽天モバイルネットワーク(RMN)」を通して、自ら無線通信設備を持つ移動体通信事業者(MNO)となるべく準備を進めている。計画では、2019年10月にサービスを開始する予定となっている。
計画通りに進めば、1年半以内にはMNOサービスが始まる。それにも関わらず、今回MVNOサービスを“強化”した。なぜなのか。サービス発表会の質疑応答と、その後の囲み取材の様子からひもといてみよう。
今回のサービス発表会における最大の疑問は「MNOサービスの開始を(予定では)間近に控えているのに、なぜMVNOサービスを強化するのか?」という点。
このことに関連して、記者と楽天の大尾嘉宏人執行役員(楽天モバイル事業担当)との間でこのようなやりとりがあった。
―― 今回の新しい「スーパーホーダイ」について尋ねる。なぜこのタイミングでサービス改定を行ったのか。これをやることで、2019年の(MNO)参入時に300万契約を獲得できる見通しが立つのか。
大尾嘉執行役員 なんででしょうねぇ(笑)。
「(通話定額は1通話あたり)10分ほしい」「大容量プランがほしい」といったお客様からの要望やスーパーホーダイの加入状況を踏まえつつ、検討を続けてきた。(プラン改定に伴う)システム開発も必要で、一番早く出せるタイミングを狙った結果、今日(6月14日)になった。
「このプランを使って(MNOとしてサービスを始める際に)300万契約を達成可能か?」という話だが、数字的には野心的な目標だとは思うが、達成したいと思っている。頑張りたい。
楽天は、楽天モバイルのユーザーを原則としてMNOサービスに移行させる方針。移行するベースとなるユーザーをなるべく多く確保するために、このタイミングで2〜3年継続して契約することにメリットのあるプランを用意したともいえそうだ。
ただし、楽天モバイルは「ドコモ回線を利用する」旨をアピールポイントの1つとしてきた。そこに魅力を感じて契約した人もいるはずで、全員がMNOサービスへの移行を「承知」するとは限らない。
「どうしてもドコモ回線で使いたい」という人にはどういう選択肢を示すつもりなのか。この点についても、記者と大尾嘉執行役員とのやりとりで触れられた。
―― MNOサービスの開設計画では、楽天モバイルのユーザーを(MNOに)マイグレーション(移行)することになっていたと思う。その観点に立つと、今のタイミングでスーパーホーダイをリニューアルする意図が分かりづらい。
マイグレーションを前提とすると、3年縛りがあることで不安を覚えるユーザーもいると思うが、今後楽天モバイルをどうしていくのか。
大尾嘉執行役員 MNO開始(移行)後もこのプランをお使いいただけるし、MVNOとしての楽天モバイルも(引き続き)お使いいただける。
楽天としてはMNOとして良質なネットワークを構築していくつもりで、現在MVNO(楽天モバイル)を使っているユーザーにはMNOに移っていただきたいと考えている。現在の楽天モバイルのお客さまが不利になるようなことは、絶対にしない。
なので、安心して3年プランに入っていただければ、と思っている。
―― 先ほどの質問と関連して確認したいことがある。MNOサービスが開始した後も、当面はMVNOサービスも併存させるという理解で良いか。
大尾嘉執行役員 現在の楽天モバイルはNTTドコモの回線を使って提供している。
先ほども言った通り、基本的にはMVNOサービスも継続するつもりである。ただ、良質なネットワークを作って行く中で、お客さまに選択していただくことを前提として、最終的には独自のネットワーク(MNOサービス)に移行していただきたいと考えている。
「来年(2019年)はどうするのか?」という話もあるが、今回は(現行の楽天モバイルにおける)2年・3年プランを発表しているので、それはそれとして使っていただけるようにする。「(MNOサービスに移行したら)こういう特典やメリットがあるけれど、どう?」ということを示して「いいね!」ということで移っていただけたら、それはそれでベターなのかなと。
また、タイミングが来たら(MNOサービスについては)詳しくご案内できると思う。
基本的には優遇策などを提示しつつMNOサービスへの移行を推進する一方、MVNOとしての楽天モバイルも併存させる戦略を取るようだ。
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