大量の着物が実家にあるけれど、どう処分すべきか悩んでいる…そんなお悩みに人気コンサルタントの永江一石さんが、自身のメルマガ『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』の中で回答しています。
高齢の母が所有する大量の着物の活用法
Question
今年米寿(88歳)の母がおります(父は他界)。母が若い頃は結城紬の販売をしており10年程前までは日本舞踊の舞台に出たりもしていた関係で、結構な数の着物(一部は反物)が実家にあります。昔は着付け教室などもした時期もありますが、もう思う様に動けないので使うあてはないようです。
元は商売っ気のある人でしたが、今は何かと面倒くさがって、だれか欲しい人いたらあげるなどと言っています。残念ながら私も弟も(妻たちも)着物はわからず、孫も女は私の長女だけで、身内の需要も乏しい。
割と値のはるものや一度しか袖を通していないものなど勿体ないので、売ったらと考えましたが、仕立て直し諸々を考えるとC2Cでは買い手にメリットが乏しい感じです。一方「着物買取」で検索するとたくさん出てきますが古本買取みたいで抵抗があります。(他界されてしまったらそうなるのかもしれませんが今ではないかなと)
やれ何とか紬だとか個々のうんちくは母が元気なうちでないと分からなくなりますし、本人が何かやりがいを感じられる作業を作りたいのですが、うまい活用案はないものでしょうか?観光地で着物レンタルが人気だったりと、着物文化自体はまだ存在感あるように思うのですが。よろしくお願いします。
永江さんからの回答
これはとても難しいご質問ですね……。というのも、今は昔ほど着物のニーズがないことに加え、大きく分けて2点問題があります。
1つはサイズの問題です。昔の人って今の人よりずっと背が低いんです。例えば今の17歳女性の平均身長は158cmですが、1956年頃は153cm、1930年代から40年代は150cmくらいしかなかったんです。今の若い人からすると、おばあちゃんの着物は小さすぎて着られません。
「じゃあ仕立て直せばいいのでは?」と思うかもしれませんが、着物は伸ばせないのでツギハギみたいに加工するしかありません。実は仕立て直し代自体はそんなに高くなく、高いのは反物、つまり生地なんです。反物のサイズは元から決まっているので、インバウンド向けに165cm以上の着物を作ろうとしたら専用の広い反物から作らなくてはならず、高いコストがかかります。
2つ目は着付けができる人が少ないという問題です。特に女物の着付けは非常に複雑なので、着付け教室に平均して10回以上通わないと習得できません。肌襦袢も全てカスタムオーダーで作る必要があり、結局時間とお金に余裕がある人しか着物は着られないんです。なので古い着物は二束三文でしか売れないというわけですね。
ただ、全く希望がないわけではありません。今『SHOGUN』ブームで日本文化への関心が高まっているので、着物を”着る”のではなく”飾る”という使い方でアピールしてみてはいかがでしょうか。海外向けに着物をインテリアとして使う活用法です。
わたしならeBayやメルカリUSAで「インテリアに着物はいかがですか?」と反物を額に入れた写真を撮影して出品しますね。今なら特に武家っぽい着物が売れるかもしれません。
それと、お母さんがまだお元気なら趣味の範囲で着付け教室を再開するのも一つの手です。会費は無料か、せいぜい5,000円で5回コースにして生徒を募り、その中で光る生徒さんがいたら「この着物、差し上げるので使ってください」と言うんです。相手は驚かれるかもしれませんが、厚意を受け取って喜んで使ってくれれば、お母さんも本望なのではないでしょうか。
着物に興味や憧れがある人は多いと思うので、もし身長が合えば、着付けから教えてくれるなら欲しいという親戚や知り合いも多いと思いますよ。
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