憧れの(?)タワーマンションに タダ で住む、うまい 仕組みをお話しします。
インチキ くさい?
いやいや、マジメ です。
まずはご一読。
数字などは極力単純にして書きますね。
簡単に、わかりやすくするために。
- あなたは必要なお金を半分しかもっていません
- 神様が現れました
- あなたは3年間、タワーマンションに暮らせることになりました
- この仕組みをチョンセといいます
- チョンセを経験すると家賃がアホらしくなるんだそう
- リスクヘッジさえ整えばチョンセはどこでも機能します
あなたは必要なお金を半分しかもっていません
さて、ここにタワーマンションが建っています。
あなたはこの物件に、とても、とても、住みたがっています。
あなたが住みたいお部屋があるのは、もちろん眺めのいい高層階です。
分譲価格は1億円です。
ああ、ですが 残念!
あなたの手元には、いま5千万円しかありません。
一生懸命、必死で働いて貯めた5千万円です。
それでも、必要な金額の半分にしかならないのです。
ならば、ローンを組んで買いますか?
う~ん。残り5千万円をローンで、かぁ・・・
なんだかしんどそうです。
あなたは思わず、ハァ と、ため息をつきました。
一方、あるお金持ちがいました。
実はこの人も、あなたの欲しがっている部屋に ねらい をつけていました。
「1億円か・・・よし買った!」
と、いうことで、この人、トンビが油揚げをさらうように、あなたの憧れの物件を買い上げてしまいました。
一瞬の出来事でした。
これにて一巻の終わり。
万事休すです。
あなたはもう、このタワーマンションのお気に入りの部屋には 住めません。
神様が現れました
さて、その数日後、
あなたが悔し涙にくれていたある晩のことです。
夜中にふと目を覚ますと、あなたのそばに、なんと、
神様 が立っています。
しかも驚いたことに、神様 はあなたにこんなことを言うのです。
「ホッホッホ。ワシは神様じゃ。お前さん、あのマンションに住みたいのじゃな。その夢をかなえてしんぜよう」
そこで、神様が述べるには―――
「お前さんは、まずあの金持ちに会って、持っている5千万円を彼に預けなさい」
そして、
「こう言うのじゃ。神様に言われました。この5千万円で、あなたはJPオルガン・チィーッスキャピタルのゴッドインカムファンドを買ってください。そして、僕にマンションを3年間タダで貸してください、とな」
「よいか。わかったかな。時刻は次の金曜日の朝9時じゃ。金持ちは天国ホテルのロビーに現れるぞ」
あなたは3年間、タワーマンションに暮らせることになりました
さて、その数日後の金曜日、
あなたは神様に言われたとおり、5千万円を携えて天国ホテルのロビーを訪れました。
時計が朝の9時を示すと、本当に目の前にあのお金持ちが現れました。
驚くあなたに、彼はこう言いました。
「お金の神様から話を聞いています。あなたが、私に 5千万円 を預け、私のマンションに 住んでくださる 方ですね」
そして、こう続けるのです。
「私はその5千万円で、JPオルガン・チィーッスキャピタルのゴッドインカムファンドを購入します。このファンドの利回りは、年10%以上で、向こう3年間そのまま推移することを神様が保証してくれています。なので年間500万円以上が儲かります。それが3年間続きます。そして、私が見たところ、その金額はあのタワーマンションのお部屋を3年間賃貸に出した場合の利回りを上回るでしょう。物件価格は1億円ですので、たとえば4%の利回りを得られたとしたら、収入は年間400万円です。3年だと1,200万円になりますね。しかしながら、私があなたから5千万円を預かり、代わりにお部屋をタダで貸すことで、私はそれを上回る収入を手にすることができるのです。なので私は引っ越しをせず、あなたに向こう3年間、お部屋をお貸しします。そのうえで、3年後、5千万円はそっくりあなたにお返しします。つまり、あなたはその間、タダでお気に入りのタワーマンションに住むことができるというわけです。どうぞ3年間、タワーマンションライフを満喫してください!」
なんと、夢のような話です。
憧れのお部屋に3年住めて、しかもその間、家賃はタダです。
何のご加護か、ご褒美か、すばらしい結果があなたに訪れました。
この仕組みをチョンセといいます
さて、以上の話、イカサマ話でもペテン師の繰り出す悪の手口でもありません。
ご存知の方は、すぐにお気づきかと思います。
これは現実にある住まいの借り方であり、貸し方です。
「チョンセ」といいます。
チョンセは韓国語です。
漢字で書くと「伝貰」です。
お隣の国、韓国ではかなり一般的な、誰でも知っている取引慣行です。
たとえば、思い浮かべてみてください。
日本の銀行金利って、いま、とてつもなく低いですよね?
でも、これが7%とか8%とか、10数%とかだったりしたら・・・?
賃貸住宅を貸す利回りよりも、高くなるケースが出てきますでしょ?
そこで、0円から数字を1万円、100万円、と積み上げていくと、
ある時点で、
・その額を銀行に預けておけば
・想定されるその物件の家賃(運用収益)よりも高い利息が得られる
・従って、その額を入居者から預かり、運用すれば
・入居者からは家賃をもらわなくてもよくなる
そんなポイントに行き当たるはずです。
それを利用するシステムがチョンセです。
いまの日本では想像もできませんが、銀行預金の利息が高い国では、容易にこのチョンセが可能となるのです。
面白いですね。
韓国では、マンションなどを買い、
それを誰かにタダで貸すことの引き換えに、
チョンセによる預り金(保証金)を預かって、
それを銀行預金運用することで利益を上げる投資を行うのが、最近までごく普通のことでした。
・入居者募集中!
・チョンセ物件
・保証金1億2千万ウォン
・契約期間2年
・家賃ゼロ(もちろん)
なんてかたちですね。
もっとも、これで暴走する人も多くって、あとで返さなきゃならない預り金なのに、次の投資に使っちゃったりも。
あるいは、いまから貸す物件を購入する資金そのものに充てちゃったりも。
しかも、そんな人がものすごく大勢・・・(笑)
それでも、
次の借り手から預かる保証金を前の借り手に返す自転車操業で切り抜けたり、
そうこうしているうちに、物件価格自体がドンドン上がることで、トータルでは悠々利益が確保出来ちゃったりと、
そんないい(?)時代が、近年まで続いていたそうです。
しかしながら、
最近は韓国の金利もどんどん下がってきているため、チョンセで儲けようとする投資家は年々減っているとのこと。
と、いうか、チョンセで儲けること自体が厳しくなってきているとのこと。
チョンセはほどなく、
「韓国社会の古き時代の思い出になっていきそう」との話も聞いています。
しかも、下降気味の経済情勢も相まって、
最近は、投資家が預り金を入居者に返せなくなるトラブルも多発しているみたいですね。
やれやれだぜ。
チョンセを経験すると家賃がアホらしくなるんだそう
さて、そこで、
僕が今回の記事でチョンセのことを書いた理由、
それは、なかなか悪くない仕組みだな、と思うからです。
まず、じっくり考えるとわかってくることなのですが、
チョンセは、切り口によっていくつかの解釈が可能なシステムです。
たとえば、
「投資信託」っぽいなぁ。そんな見方も出来ますよね。
資金の運用を物件オーナーに任せ、その配当として、入居者は物件への居住権をもらう。
そんな解釈です。
あるいは、
「入居者はオーナーに資金を貸しているんだ」
でもいいですね。
投資をしたいオーナーに、投資用資金を無利息で貸してやる代わりに、貸している間はオーナーさんの物件にタダで住まわせてもらいますよ、というロジックです。
なお、いずれにしても、入居者に恩恵があるとすれば、それは楽であることです。
冒頭の神様のお話でも、思い出してください、
よくよく考えてみれば・・・
・JPオルガンのファンドは、お金持ちではなく、あなたが買う
・そして、あなたが得た配当を家賃としてお金持ちに支払う
これでも、同じ結果が生じます。
なので、神様は、
「お前さんはファンドを買うのじゃ。それで儲かる配当をそっくり家賃として金持ちに払うと申し出るのじゃ。そうすれば、金持ちはお前さんに部屋を貸してくれるじゃろう」
そうアドバイスしてもいいんです。
ただ、このアドバイスと、冒頭の話の中でのアドバイスが、どこか違っている感じがするのは、
冒頭の話の場合、あなたはとても「楽」なんですね。
気持ちも含めて。
楽チン。
つまり、投資行為と運用の手間、
これらをお金持ちに任せることで、あなたはこれらを行う仕事からスッキリ解放されているんです。
同時に、運用リスクからも解放されているんですね。
なので、
韓国にもチョンセではない、月額家賃の物件はたくさんあるんですが、
一度チョンセで物件を借りると、楽チンすぎて、
月額家賃の方に住むのが アホらしく なるともいわれています。
(なお、それら月額家賃の物件の多くも、韓国ではウォルセ(月貰)という、これまた日本とはやや違うシステムで運営されています)
ただし、論理を繰り返しますが、
チョンセでは、入居者は、自らが保証金相当額を運用する場合に得られるはずの収益機会を放棄させられてはいるんです。
居住権と引き換えに。
とはいえ、放棄させられるその収益というのはすなわち不労所得であって、労働収入にはまったく傷がつきませんから、損失感はほとんど感じない、ともいえるんでしょうね。
さて、そのうえで、
冒頭のお話ですが、
このケースでは、神様がファンドの利回りを保証してくれています。なので誰にもリスクはありません。
あなたは丸投げで楽チン、
投資と運用を丸投げされたお金持ちの方も、リスクからは解放されています。
ポイントは ここ なんです。
投資の中で、手間とリスクが少ないものの筆頭といったら、銀行預金ですよね?
神様の保証に近いくらい安全です。
少なくとも先進国クラスの国では。
では、その銀行預金の利息がグーンと高いとしたら・・・?
そういうことなんです。
韓国のチョンセは、そんな環境の上に成り立ってきたわけなんです。
(やがて、さきほど触れたような暴走も始まっちゃうんですが)
そしていま、銀行預金の利息が韓国でもグーンと下がってきているため、チョンセは徐々に利用が減り、衰退しつつあるわけです。
リスクヘッジさえ整えばチョンセはどこでも機能します
さてさて、そういうわけで、
どうも先行き 寂しい 雰囲気のチョンセなんですが、
金利や配当を生むのって、もちろん銀行預金だけじゃないですよね?
理論上、
チョンセを成立させるような資金の運用先があれば、
チョンセは、仕組みとしてはどこでも成立します。
もちろん日本でも。
そこで、シミュレーションとして挙げたのが、冒頭の話なんです。
オーナーは、銀行預金じゃなく、ファンドを買う。
でも、これって、あぶなっかしくってしょうがないですよね。
このハナシでは、繰り返しますがファンドの利回りを神様が保証してくれています。
しかし、現実にはもちろんそうはいきません。
オーナーさんが、投資に失敗し、預かったお金を溶かしてしまうリスクっていくらでもあるんです。
悪いヤツは持ち逃げしたりね!
さらには、マンションの所有権も実は持っていなかった・・・なんて。
恐ろしい!
ただ、どうですか?
そういうリスクって、おそらくどれもシステムで潰せるものでしょ?
たとえば、
金融機関が集まって、保険会社も誘ったりなんかして、リスクヘッジの仕組みをつくっていけば、
かなりの程度カバーできるもののはずです。
全世界同時的な金融破綻があったような場合はともかくとして。
なので、
繰り返しふれているとおり、地元韓国ではチョンセはいまや過去のものになりつつあるんですが、
いやいや、どっこい。
世界の金融がますますカオスに錯綜していく中、
意外とこれから面白い仕組みかもしれないぜ
案外大きなシステムに広がる可能性もあるぜ
と、いうのが僕の見方です。
ちなみに、住みたい物件がチョンセを採用していて、
その保証金が高くて用意できない場合、
あなたならどうしますか?
「お金を借りる」
そうなんです。
現地でもそうする人って多いらしいんですね。
親御さんや親戚から借りたり、銀行から借りたり。
未確認ですが、チョンセ用のローンもあるんだとか。
すると、ここでも色んな解釈が見えてきますでしょ?
チョンセの保証金をオーナーに「貸す」ことで得られる配当、
それは居住権、
すなわち「家賃支出の解消」と、いうことにもなるんですが、
その分の利益(解消される家賃相当額)の方が、金融機関に支払う利息を上回ると判断できるのであれば、
涙ぐましくチョンセ用ローンを借りることも、
実は、儲かる投資になっているんだ―――とか。
いかがですか。
ともあれ、このチョンセには、どうも面白い可能性があるように僕には感じられてならないんです。
僕の何十倍も何百倍もアタマのいい人、
ぜひこの仕組みを 研究してみてほしい!
以上、そんな話です。
(イラストは「かわいいフリー素材集 いらすとや」さんより)