自宅で母親の介護をする60代男性Aさんは、3年前に自宅をバリアフリーにリフォームしたが、大失敗に終わった。
「当時は母もまだ歩けたので廊下に手すりを設置したのですが、これが余計だった。いよいよ足腰が弱り車椅子生活になると、手すりが邪魔で通行できないんです。階段にも手すりを付けましたが、2階に上がることがなくなり、これも無駄に。結局は自宅が不便で高齢者施設に入居することになりました。リフォームにかかった数十万円はなんだったのか……」
介護アドバイザーの横井孝治氏が語る。
「介護のためにリフォームしても、容体の悪化でリフォーム部分を使わないまま入院したり施設に入所したりするケースが少なくありません」
なかでもAさんのように、「手すりの設置」は典型的な失敗しがちなポイントだという。
廊下が広ければ使い勝手はいいが、平均的な日本の家屋は廊下が80cmほど。手すりを壁に付けると約8cm狭くなる。
「両壁に付けるといざ車いす生活になった際、通行に支障が生じやすいんです」(同前)
介護用品も無駄になりがちだと横井氏は話す。
「特に電動ベッドの失敗例が多い。背もたれの上下機能のみから横回転機能付きといった物まであり、介護度によって体に合う製品が違います。数万円出して購入した後で“このベッドは合わない”となるケースが多い。しかも介護用品は中古品が避けられやすく、売れても二束三文にしかなりません。基本は業者からのレンタルで十分です」