書面添付制度とは?

書面添付制度とは?

書面添付制度とは、税理士法第33条の2と第35条に規定される意見聴取制度の総称です。

具体的には、税務申告書等を作成した税理士による、税務署に対する所見表明です。
つまり、税理士が税務署に対して「この申告書類は適正ですよ」と専門家としてのお墨付きを与えることができる制度です。

書面添付制度を利用している場合、税務署は納税者に対して税務調査を通知する前に、添付書面に記載されている事項について、税理士に対して意見を述べる機会を与えなければならないこととされています。

したがって、税務署はいきなり税務調査に入ることができなくなり、税務調査の前に税理士からの意見聴取というワンクッションが置かれることになります。

税務署は、この税理士に対する意見聴取によって申告書の内容に問題が無いと判断すれば、税務調査を省略します。

なお、書面添付制度は税理士にだけ認められた権利です。
したがって、相続人が自分で申告書を作成提出する場合には利用できないことになります。

書面添付のメリット

税務調査の確率を大幅に減らすことができる

書面添付制度は、非常にメリットの大きな制度と言えます。
その理由を具体的に見ていきましょう。

税務調査の確率を大幅に減らすことができる

国税庁の公表データによると、全国におけるすべての相続税申告案件において、税務調査が行われる確率はおおよそ10%となっています。
それに対して、書面添付制度を利用している場合の税務調査が行われる確率は1~5%程度と推定されます。

上述のとおり書面添付制度を利用した場合、税務調査の前に税理士に対する意見聴取という場が設けられますが、この意見聴取の結果、税務調査が省略されることが非常に多いため、このように税務調査率が大幅に低下するのです。

また、書面添付制度を利用する場合に申告書に添付する書面には、税理士がどういった事項を検討し、申告書に反映したかを個別具体的に記載する必要があります。
したがって、書面添付制度の利用に対応している税理士は、そもそも申告書作成能力が高いということも言え、そのことも書面添付制度を利用した場合の税務調査率を押し下げる要因になっているでしょう。

このように税務調査が行われる確率を大幅に下げることができるのは、相続人にとって非常に大きなメリットと言えるでしょう。
税務調査が入ってしまえば、相続人は調査担当者から直接質問をされることになり、その負担は少なくありません。
また、税務調査の確率が高いのと低いのでは、相続税の申告書を提出した後の心理的な負担も大きく違うでしょう。

相続税の税務調査について詳しくは「相続税の税務調査とは?来る割合や時期は?少額でも来るの?」をご参照ください。

加算税がかからない

税務調査で相続財産の申告漏れが見つかった場合、未申告であった相続税本税だけではなく、加算税や延滞税といったペナルティも支払う必要があります。

しかし、書面添付制度を利用した場合に設けられる、税務調査前の意見聴取において申告漏れが見つかった場合の修正申告は、自主申告扱いとなり、加算税がかからなくなります。

ただし、本税や延滞税については支払う必要があります。

書面添付のデメリット

書面添付制度を利用した相続税申告は、近年増加傾向にあるものの、令和2年度でも全体の22.2%と利用割合は決して多くありません。
これだけ明らかメリットがあるにもかかわらずその利用割合が少ないのはなぜでしょうか?

ひとつには、税理士にとっての責任の重さがあるでしょう。
というのも、仮に添付する書面に記載された内容に誤りがあった場合は、税理士は最長で2年間の業務停止処分を受けるリスクがあるのです。

また、そのように間違えがあってはならない書面ですから、慎重に時間をかけて作成する必要があり、書面添付制度を利用しない場合に比べて作業量が増えてしまいます。

書面添付制度にはこのような背景があるため、特に相続税申告の実務経験が少ない税理士は、書面添付制度の利用を避ける傾向にあります。

あるいは、その責任の重さや作業量に見合った追加料金を請求する税理士も多く、その費用面の負担がデメリットであると言えるでしょう。

書面添付の内容

添付する書面は国税庁が様式を用意しており、インターネットでダウンロードして使用することができます。

様式には申告書を作成した税理士の住所氏名などの情報や、税理士に依頼した相続人などの情報を記載するとともに、財産の種類ごとに、計算方法や調査・整理した事項を記載していきます。

財産の種類ごとの記載事項は、例えば次のような内容です。

区分事項備考
現預金 まず生前の所得収入を確認ののち、預貯金口座等への入金状況の検討、
次に口座相互間の入出金状況の検討と使途の確認
 家族名義の預貯金が実質的に被相続人の支配下にあったことから、相続財産に計上した。
 特に不動産譲渡代金の流れは十分に確認した。
残高証明書
預貯金通帳等

売買契約書
税理士会公表の雛形より抜粋


このように、どういった事項を税理士が検討し、申告書に反映したかを個別具体的に書面に記載して添付する必要があります。

まとめ

書面添付制度を利用して相続税申告ができるのは税理士のみとなります。
したがって、相続人がご自身で相続税申告をする場合には書面添付制度の利用はできません。
書面添付制度を利用すれば税務調査に入られる確率を大幅に下げることができます。
迷わずに書面添付制度に対応している税理士に申告を依頼するようにしましょう。

当事務所では、追加料金をいただくことなく、原則すべての相続税申告において書面添付制度を利用しています。
その理由は、当事務所では書面添付制度を利用するしないにかかわらず、責任を持って慎重に申告書を作成しており、書面添付制度を利用するからといって、特に追加の作業や責任が発生するとは考えていないからです。

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