見終わった後、不覚にも何度も思いだし笑いをしてしまった。「記憶にございません!」(19年)以来、三谷幸喜監督が5年ぶりに脚本と監督を務める新作はミステリー要素を交えたコメディー。ツボをくすぐる笑いが随所にあり、全く別の角度からくすぐってくるから、油断がならない。
長澤まさみを主人公のスオミ役に迎え、豪華キャストが勢ぞろいした。大金持ちだが、どけちの売れっ子の詩人(坂東彌十郎)の妻スオミが突然いなくなり、4人の元夫が詩人の豪邸に続々と集まってくる。
前夫でイケメンだが、神経質な刑事(西島秀俊)、最初の夫で血の気が多く、Mっ気たっぷりの庭師(遠藤憲一)、金回りはいいが、どこか怪しげなYouTuber(松坂桃李)、格好つけだが、情に厚い刑事(小林隆)。5人のキャラクター設定が絶妙だ。右往左往する会話劇はテンポがいい。
作品の強度を押し上げているのは長澤の演技だ。ときには女王様、ときにはしとやかに、演技のスピードと熱量を変える。登場人物が歌い、踊る、最後のミュージカルシーンは三谷ワールド全開だ。開放感にあふれ、なんだか晴れ晴れとした気持ちになった。【松浦隆司】
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