吉沢亮(30)が5日、東京・新宿ピカデリーで行われた主演映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」(呉美保監督、20日公開)完成披露上映会に登壇。作品で描かれる手話と出会って「言葉を伝えることの重要性…やっぱり気持ちは伝えないと」と、感じた思いをかみしめるように口にした。

「ぼくが生きてる、ふたつの世界」は、作家・エッセイスト五十嵐大氏の自伝的エッセー「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」(幻冬舎)を原作に、呉美保監督(47)が9年ぶりに長編映画を製作。吉沢は劇中で、耳の聞こえない両親のもとで愛されて育った五十嵐大を、大の母明子を忍足亜希子(54)が演じた。

吉沢は、耳の聞こえない両親を持つ子供「コーダ」を演じたことについて「プロット(あらすじ)を読んだ段階で、すごく特殊なコーダの環境ではあっても、描かれている普遍的な親子の愛情の変化も、共感できる部分が多かった」と、その印象を語った。呉監督の作品は「好きな世界観で、いつか出させていただけたらと思っていた」だけに「純粋に、すばらしいお話だと思ったので、ぜひともやらせていただきたくなった」とオファーを快諾したと明かした。

そして、舞台あいさつの最後に熱く語った。

「この作品に参加し、改めて言葉を伝える重要性というか…日常に生きていて、ただただ言葉を吐き捨てるように言う瞬間だったり、あえて自分の中に壁を作って思いを伝える作業を、どうしてもやらない手段を取ることが、よくあると思う。手話と出会って、やっぱり気持ちは伝えないと伝わらないし、今、怒っているよ、悲しい思いをしていることを、全て伝えてくれる言語は、すばらしい世界だなと思った」

その上で、観客に「伝えるって大事だなということを、感じてもらえることがあれば、僕は幸せ」と観客に語りかけた。

◆「ぼくが生きてる、ふたつの世界」 宮城県の小さな港町、耳の聞こえない両親のもとで愛されて育った五十嵐大。幼い頃から母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、いら立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つが…。