昨年の最優秀スプリンターに輝いたママコチャ(牝5、池江)が、今週末のセントウルS(G2、芝1200メートル、8日=中京)で秋初戦を迎える。
月曜朝に池江厩舎で、担当の斎藤助手を取材した。なにげなく馬体重をたずねると、先週の時点で510キロだという。ちなみに、前走の高松宮記念出走時は488キロ。その差はなんと22キロだ。
太め残りか? いや、待てよ…。
ここで、個人的に苦い思い出がよみがえった。
あれは昨秋のスプリンターズSのことだった。
その週の月曜に、当時の担当だった松村厩務員(現在は定年により退職)を取材する機会があった。聞けば、1週前の段階で馬体重が510キロを超えているという。直前の北九州記念出走時は492キロ。その後の木曜(レース3日前)に計測された事前発表馬体重も506キロだった。
やっぱり重いのか…。
ママコチャについてはよく知っているつもりだった。白毛のG1・3勝馬ソダシの全妹としてデビュー前から注目されており、足しげく訪れる池江厩舎の所属馬。姉と違ってカイ食いに不安はなく「輸送で減るタイプではない」とも聞いていた。
それでも、さすがに太いのでは…。先入観もあってか、見た目にも余裕があるように感じた。
取材の感触自体は良かった。川田騎手や池江師の言葉からも手応えが伝わってきた。しかし、結局、本紙予想(西日本)の担当として、本命には推せなかった。
だから、レース当日の馬体重を見て目を疑った。490キロ。なんと前走比マイナス2キロ! そして、ご存じの通り、鼻差の激闘を制してスプリント女王に輝いた。
あれから1年近くが過ぎた。
ちなみに前走の高松宮記念でも、木曜時点では498キロだったが、当日までの3日間で10キロ減った。斎藤助手は「自分で体をつくるタイプなんでしょうね」と推察する。ただ、直前に食欲を落としたり、極度にイレ込んだりすることはないという。(“レディー”に対してデリカシーのない話だが)もしかして排せつ量で調整しているのか…。
そう、ママコチャはミステリアスだ。
セントウルSはG2のため、G1と違って事前の馬体重が公表されることはない。はたして当日に何キロで出てくるのか? 今回は前哨戦でもあり、斎藤助手も「若干、余裕はあるかな」とみている。多少の体重増なら想定内だろう。
余談だが、市民ランナーの僕は自宅で毎晩、体重計に乗っている。一方で、競馬の予想においては、人間と競走馬で約10倍の体重差があるだけに、1桁の増減なら目くじらを立てないようにしている。あまり数字にとらわれすぎてはいけないとは分かっているつもりだ。でも、痛い目にあっただけに、やっぱり気になってしまう。【太田尚樹】