【上毛電気鉄道編】西武GM兼監督代行…渡辺久信の器を育んだ新里まで/連載〈23〉

旅が好きです。日本の全市区町村の97・3%を踏破済みです。かけ算の世の中、野球×旅。お気楽に不定期で旅します。題して「野球と旅をこじつける」。第23回は群馬県。苦しんでいる西武の、渡辺久信GM兼監督代行(58)の故郷を、上毛電気鉄道に揺られながら訪れてみました。

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■「なんにもないよ」

夏が早まっているのもあるけれど、内陸だからなおさらだ。JR前橋駅で電車を降りた瞬間に、前橋は暑かった。

吸い寄せられるように改札前のマクドナルドへ。「いま機械が修理中でして」と、なんとマックシェイクが販売休止中。アイスティーでひとまず潤す。

2日前、西武の本拠地ベルーナドームに行った。ユニホームを着ることになった渡辺GMがいた。群馬出張を伝えた。「あさって行くの? あちぃぞ~」とニヤニヤしていた。

「赤城おろし、味わってきます」とボケると「赤城おろしは冬だよ」とすかさず突っ込まれる。GM(とあえて書く)とは昨年の担当記者時代からたまに、群馬の話をしていた。「俺は赤城おろしに鍛えられたんだ。さみぃんだよ」とよく懐かしんでいた。

前橋に着いた日は、ドラフト候補投手のいる前橋商などにおじゃました。野球部の住吉信篤監督は実はGMと同じ、桐生市新里(にいさと)町の出身だそう。「後輩の住吉君によろしくね」と言付かっていた。

伝えると「ええっ!?」と恐縮のご様子。「GMとはもう何年もお会いできていませんが、実はそうなんですよ」と住吉監督。豪快だけれどきめ細かい。GMの懐の大きさをあらためて感じさせられた。

住吉監督は「えっ、明日、新里に行くんですか? 何もないですよ」と笑っていた。GMも言っていた。「なんにもないよ」。

何もないよ―。GMが監督兼任となり、初めての本拠地での試合前のベンチ。あいさつし「今度、群馬出張があるので新里に行ってきます」と報告した。GMは「新里、ほんとに行くの? なんにもないよ」と笑っていた。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。